<東北の本棚>人生最期の鍵は恩送り

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看取るほどわかる命の重さかな

『看取るほどわかる命の重さかな』

著者
山室 誠 [著]
出版社
金港堂 出版部
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784873981406
発売日
2021/10/01
価格
1,320円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

<東北の本棚>人生最期の鍵は恩送り

[レビュアー] 河北新報

 在宅医療に携わる仙台市の医師で、終末期のプロの著者。その講演を聴いたことがある。ユーモアを織り交ぜた語り口に引き込まれ、日常から生の地続きとして死を思う大切さを教えられた気がする。

 本書はそうした講演録を分かりやすく再構成し、終末期医療やみとりに関する多様な考察を盛り込んだ。「メメント・モリ(死を常に考えよ)」というメッセージが太い芯として貫かれている。

 理想の死とされる「ピンピンコロリ(PPK)」。しかし、高齢者のほとんどは70代半ばから何らかの要介護状態となり、「ヨボヨボ、モタモタ、ジンワリ」最期を迎えるのが現実。著者は、PPK信仰のあまり、周囲の世話になることが「迷惑」と解釈されがちなことを問題視する。

 「迷惑の掛け上手」になるための鍵は「元気なうちに誰かのために時間を使う『恩送り』だ」と強調する著者。最期の時に向けては、望む治療などを記した「申し送り書(事前指示書)」の作成など、家族で終末期について話し合う「ACP(人生会議)」が欠かせないと指摘する。

 重い病が見つかり、大切なものを徐々に失っていく「死の模擬体験」は、紙とペンを用意してぜひ試したい。命の有限さ、大切な人のありがたさに改めて気付く。(浅)
   ◇
 金港堂022(397)7682=1320円。

河北新報
2022年2月14日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

河北新報社

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