『看取るほどわかる命の重さかな』
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<東北の本棚>人生最期の鍵は恩送り
[レビュアー] 河北新報
在宅医療に携わる仙台市の医師で、終末期のプロの著者。その講演を聴いたことがある。ユーモアを織り交ぜた語り口に引き込まれ、日常から生の地続きとして死を思う大切さを教えられた気がする。
本書はそうした講演録を分かりやすく再構成し、終末期医療やみとりに関する多様な考察を盛り込んだ。「メメント・モリ(死を常に考えよ)」というメッセージが太い芯として貫かれている。
理想の死とされる「ピンピンコロリ(PPK)」。しかし、高齢者のほとんどは70代半ばから何らかの要介護状態となり、「ヨボヨボ、モタモタ、ジンワリ」最期を迎えるのが現実。著者は、PPK信仰のあまり、周囲の世話になることが「迷惑」と解釈されがちなことを問題視する。
「迷惑の掛け上手」になるための鍵は「元気なうちに誰かのために時間を使う『恩送り』だ」と強調する著者。最期の時に向けては、望む治療などを記した「申し送り書(事前指示書)」の作成など、家族で終末期について話し合う「ACP(人生会議)」が欠かせないと指摘する。
重い病が見つかり、大切なものを徐々に失っていく「死の模擬体験」は、紙とペンを用意してぜひ試したい。命の有限さ、大切な人のありがたさに改めて気付く。(浅)
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金港堂022(397)7682=1320円。