『なぜ、そのウイスキーが死を招いたのか』
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<東北の本棚>バーテンダー 謎を解明
[レビュアー] 河北新報
ブラック・ボウモア42年、19世紀のマッカラン…。愛好家垂ぜんの希少ウイスキーが絡むからなのか、4編のミステリーで事件を起こす面々の欲は際限なく膨らんでいくよう。仙台市在住の作家のウイスキー愛が、人を狂気に導くこともあるこの酒の魔力を際立たせる。
どの物語も、定禅寺通にほど近い路地にあるバー「シェリー」での常連客の語りから始まる。カウンター越しに客が話す不可思議な事件をバーテンダー安藤が解き明かす。
書き下ろしの最終話。日本一のマッカラン収集家を自称する老人が、総額数億円にもなるコレクションの寄贈相手を選ぶために、利き酒会を催す。1861年のマッカランを当てるために4人が集まった老人の家で突然の悲劇は起きる。
真相を解明する安藤の心は、酒に惑わされる事件の当事者らと対極にある。年齢不詳のバーテンダーは、程よく熟成したオールドボトルのように味わい深い。
著者は1980年長野県生まれ。東北大大学院法学研究科修士課程修了。2013年、第3回アガサ・クリスティー賞を受賞し、受賞作を改題した「致死量未満の殺人」でデビュー。他の著作に「グッバイ・マイ・スイート・フレンド」などがある。(安)
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光文社03(5395)8116=748円。