社員のやる気はなぜ失われる? うまくいく組織がやっている「心理的安全性」を確保する施策

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こうして社員は、やる気を失っていく

『こうして社員は、やる気を失っていく』

著者
松岡 保昌 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784534059215
発売日
2022/04/30
価格
1,760円(税込)

書籍情報:openBD

社員のやる気はなぜ失われる? うまくいく組織がやっている「心理的安全性」を確保する施策

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

多くの企業は、社員のモチベーションを高めることばかりに意識が向きがち。こう指摘しているのは、『こうして社員は、やる気を失っていく』(松岡保昌 著、日本実業出版社)の著者です。

もちろん、それを一概によくないことだと断定はできないでしょう。しかし、社員のモチベーションを上げるために会社がどれだけ取り組んだとしても、職場において日常的に、無意識のうちにモチベーションを下げるようなことが行われているとしたら?

まずは自社の状況を把握して、モチベーションを下げる要因=「やってはいけないこと」をしないようにするほうが、優先順位は高いのです。

モチベーションを高める方法は無数にありますが、「やってはいけないこと」には共通するパターンがあります。

だからこそ、どんなときに社員の「やる気」が下がるのかを知ること。まず、これを知らないとはじまりません。そして当然ですが、その改善策も知ってください。実行すれば、あきらかに職場の雰囲気が変わりはじめるでしょう。(「はじめに 〜やる気をそぐ「残念な上司」と「ガッカリな職場」〜」より)

経営コンサルティング、組織人事コンサルティングを行っているという著者は、多くの会社の経営や組織風土の改革を支援するなかにおいて、「人のマネジメントを、勘と経験だけで行っている管理職やリーダーが多すぎる」と感じているそうです。

もちろん経験は大切ですが、同時に求められるべきは、心理学の知識やエビデンス(根拠)、労働意識の傾向を知り、それらをツールとして使いこなせるようになること。人のマネジメントはきちんとしたスキルなので、学んで身につけるべきものだという考え方です。

そこで本書では、マネジメントに関わるすべての人に知っておいてほしい心理学の知識、知恵やノウハウなどをまとめているわけです。

きょうは第4章「こうして社員が変わり、会社も変わっていく〜『組織心理』に基づいたマネジメント〜」のなかから、「創造性を求められる時代、緊張感は逆効果」に焦点を当ててみたいと思います。

個人のやる気を引き出し、組織として最大のパフォーマンスを導き出すために知っておくべきキーワードは、「心理的安全性」と「ブラックボックス化」だというのです。

「心理的安全性」は組織の永続性にすら影響する

変化の激しい時代に最先端の仕事を「創造」していく際、自分ひとりだけの知識や経験では太刀打ちできなくなっていると著者はいいます。

他人を巻き込み、他者の経験や知恵をも自分のものとして活かした、自由に意見をいい合える環境づくりが不可欠だというのです。

人事評価が、一度でも失敗すると二度とチャンスを与えられない減点主義の評価基準。縄張り意識が強く情報共有に不十分で、さらに足を引っ張り合うような組織。

このように何をするにも緊張感を持たないといけないような職場では、人は安心して他者と関わることができません。(209ページより)

「こんなことをいったらバカにされるのではないか」

「質問されておかしな回答をしたら、仕事ができないやつだと思われるのではないだろうか」

「下手なことをしゃべるよりは、黙っていわれたことだけやっておこう」

というように、仕事の話を積極的にしなくなったり、前向きな思考をストップさせるような環境では、人のやる気は下がり、組織は硬直し、企業は衰退していくということ。

また、「心理的安全性」が確保されていないばかりか、自分の居場所の危険すら感じ始めるとしたらどうでしょう? そうなると、その当事者は仕事を抱え込み、他の人が簡単に仕事を代われないような状況をつくり出してしまうかもしれません。その結果、仕事が「ブラックボックス化」してしまうことも考えられるのです。

しかし仕事のブラックボックス化は、その人がいないと業務が止まってしまうリスクを伴うため、マネジメントも困難になります。

実際にある企業で、新しく代わった上司の方針についていけなくなった社員が、自分の仕事をブラックボックス化してしまったのだそうです。その根底にあったのは、「このままでは評価が下がってしまうのではないか」という恐怖感。自分にしかわからない仕事があれば、クビにはできないだろうと考えたわけです。

それに気づいた上司は、何度も面談を繰り返し、きちんと評価していること、クビにするつもりはないこと、職場においてその社員の仕事があることなどを伝え続けたそう。その結果、やっと信頼関係を築くことができ、その社員も次第にオープンになっていったといいます。

ここからわかるのは、安全で安心な環境の重要性。それを確保できると実感できない限り、人はブラックボックス化のような物理的な方法で自分の立場を確保しようとするわけです。(208ページより)

「ブレインストーミング」が上手な組織は、「心理的安全性」が確保されている

新たな発想を生み出すうえで、「ブレインストーミング(ブレスト)」は有効な手段。にもかかわらず「ブレストをしてもいい意見がでない」「もともと活発に意見を出し合う社風ではないので、うちでは無理」などの声を聞くこともありますが、それはブレストのやり方に問題があるからなのだとか。

問題は漠然と意見を強要したり、その場で批判や評価をしてしまうこと。

ブレストは、その名のとおり、参加者全員の脳の中を嵐のようにかき混ぜて、大量のアイデアを嵐のように出し合うのが目的です。そのため、重要になるのは「批判しない」「自由に発言する」「質より量を重視する」「アイデアの結合、連想、便乗をする」という4原則です。(211〜212ページより)

いわば、その場では「なにを発言しても大丈夫」という「心理的安全性」が確保されていることが絶対条件だということ。

ところが参加者に自分の地位や立場、所属部署などの意識が強いと、ブレストがうまくいかなくなるもの。「それは◯◯課としての意見」というように地位や立場の意識が挟み込まれてしまうと、アイデアの連鎖は生まれにくくなるわけです。

だからこそ、「うちの職場ではブレストは無理」と思っているのだとしたら、大前提となる「心理的安全性」が欠けていないかどうかを振り返ってみる必要があるということです。(211ページより)

最初から最後まですべてのページを読まなくても、見出しが気になる箇所を読むだけでOK。著者はそう記しています。なぜなら見出しが気になるということは、実際に職場で起こっていることかもしれないから。モチベーションの高い組織や会社をつくるために、まずはそんな読み方をしてみてはいかがでしょうか?

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2022年5月26日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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