『なぜ日本からGAFAは生まれないのか』
書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます
GAFA入門に最もおすすめ
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
米国の巨大IT企業であるグーグル、アップル、フェイスブック(現・メタ)、アマゾンをまとめてGAFAと呼ぶ。これら四社の株式時価総額は合わせて約七七〇兆円と、日本の上場企業全社の総額をはるかに超える。かつて世界を席巻した日本企業群は、新興GAFAに背中さえ見えぬほど引き離されてしまった。
山根節・牟田陽子『なぜ日本からGAFAは生まれないのか』は、まさにタイトル通りの根本的な疑問に、正面から挑んだ一冊。第一~四章では、GAFA各社の誕生と発展の経過が語られる。共通するのは、若く優れた才能の集積、スパンが長く透徹したビジョン、そして失敗を許容する環境ということになるだろうか。
終章では、「GAFAにあって日本企業にないもの」の分析が行われる。産業革命以来の流れに最適化した日本人の労働スタイルは、情報革命という新しい波にマッチしなかったという見方は、説得力があると思える。また、若い才能をリスペクトせず、潰してしまう動きが強かったのも確かだ。みんなで足並みを揃えて隅々まできちんと、という日本人の性質が起業家精神とマッチしないのも、認めざるを得ない。ただ、日本にも才能ある若者は多くおり、彼らを援助する環境も整いつつあるというから、今後に期待したい。
GAFAやIT業界に関する本は、これまでにも数多く出ている。本書は中でも読みやすくまとまっており、最初に手に取る本としてもおすすめだ。