GAFA入門に最もおすすめ

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なぜ日本からGAFAは生まれないのか

『なぜ日本からGAFAは生まれないのか』

著者
山根節 [著]/牟田陽子 [著]
出版社
光文社
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784334046118
発売日
2022/05/18
価格
1,012円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

GAFA入門に最もおすすめ

[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)

 米国の巨大IT企業であるグーグル、アップル、フェイスブック(現・メタ)、アマゾンをまとめてGAFAと呼ぶ。これら四社の株式時価総額は合わせて約七七〇兆円と、日本の上場企業全社の総額をはるかに超える。かつて世界を席巻した日本企業群は、新興GAFAに背中さえ見えぬほど引き離されてしまった。

 山根節・牟田陽子『なぜ日本からGAFAは生まれないのか』は、まさにタイトル通りの根本的な疑問に、正面から挑んだ一冊。第一~四章では、GAFA各社の誕生と発展の経過が語られる。共通するのは、若く優れた才能の集積、スパンが長く透徹したビジョン、そして失敗を許容する環境ということになるだろうか。

 終章では、「GAFAにあって日本企業にないもの」の分析が行われる。産業革命以来の流れに最適化した日本人の労働スタイルは、情報革命という新しい波にマッチしなかったという見方は、説得力があると思える。また、若い才能をリスペクトせず、潰してしまう動きが強かったのも確かだ。みんなで足並みを揃えて隅々まできちんと、という日本人の性質が起業家精神とマッチしないのも、認めざるを得ない。ただ、日本にも才能ある若者は多くおり、彼らを援助する環境も整いつつあるというから、今後に期待したい。

 GAFAやIT業界に関する本は、これまでにも数多く出ている。本書は中でも読みやすくまとまっており、最初に手に取る本としてもおすすめだ。

新潮社 週刊新潮
2022年7月28日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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