【児童書】『空と大地に出会う夏』濱野京子著、しらこ絵 ひと夏の成長物語
[レビュアー] 油原聡子
理屈に合わないことを好まず、無駄なことをしない小学6年の理一郎が主人公。同学年の少年少女2人との交流を軸に物語が展開される、ひと夏の成長物語だ。
おばの家でピアノのレッスンを受けた理一郎は帰り道で同じ学校の少女、海空良(みそら)と話したことをきっかけに、世界が広がっていく。
理一郎は、海空良に誘われ、かつて同じ学校に通っていた大智(ひろと)の家に遊びに行くようになる。強引で明るい海空良、マイペースな大智の2人と料理をしたり、おしゃべりをしたりする時間に居心地の良さを感じはじめる。自分と正反対の2人を受け入れることで、価値観が変化していく。
現代社会を反映した作品を得意とする著者ならではの味付けも健在だ。
作中では、血のつながらない家族や不登校の大智、スカートをはきたくない女子児童らを通して、さまざまな社会課題がさりげなく盛り込まれ、読み手が問題に目を向けるストーリーになっている。小学生だけでなく大人も楽しめる作品に仕上がった。(くもん出版・1430円)
油原聡子