『しろがねの葉』
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『きらきらし』
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ルールを破るかわいい不良に
通常帯と候補帯と受賞帯が欲しい!
宮田 『しろがね』の直木賞受賞の帯は持っていなかったので、そちらを今日編集さんにいただけたのが嬉しかったです。通常帯のかかった本は3冊持っていますが、候補帯の本は書店でもすぐ品切れになってしまって。
千早 え、帯が欲しいんですか?
宮田 やっぱりファンとしては、記念なので欲しいなと……。この本を一回目に読んだとき、この本を帯が変わってからまた読んだとき、と思い出せるのも嬉しい。装幀もすごく好きです。
千早 ありがとうございます。本当に本が好きなんですね。装幀に口を出さない作家さんもいますけど、私はわいわいみんなで作るのが好きで、編集さんやデザイナーさんと相談して考えますね。
宮田 これ(カバーを外した表紙の絵)がめっちゃいいですよね。
千早 ここは気づかない人が多いから嬉しいです。装幀担当の方が石見の古地図を元に描いてくれました。
宮田 そうなんですか! カバーを外したらまた別の本みたいで良くて。
千早 『西洋菓子店プティ・フール』の文庫も、題字は挿画の西淑さんに書いてもらいました。友人なのですが、既存のフォントがどうしても作品に合わないと相談したら、「やってみるけん」と。ありがたかった。
宮田 めちゃめちゃかわいいです!
千早 装幀にも色々思い出があるから、そう言ってもらえて嬉しいです。
宮田 装幀が凝った本って、手に取った感じも全然違うじゃないですか。手触りとか。そこがいいんですよね。
千早 尾崎世界観さんは匂いが違うと言っていました。あと、小説家になる前から好きだった川上弘美さんの装幀をよく手がけていたデザイナーさんに本を作ってもらえるようになったのが嬉しかったです。『透明な夜の香り』もそうで。今度続編が出るんですよ。
宮田 はい、それを聞いたとき、踊りました! リビングで一人喜びの舞を踊って愛犬に吠えられました(笑)。
執筆は文字数との戦いの連続!
千早 『きらきらし』の中の五篇は、どれくらいの時間でどういう順番で書かれたんですか。
宮田 かつかつのスケジュールで、三ヶ月ぐらいで書きました。「坂道の約束」は本当に一日で書いて。「紅梅色」は元の原稿がすっごい長くて、今の二倍半ぐらいありました。書いた順番は、「ハピネス」「紅梅色」「坂道の約束」「好きになること」「つなぐ」です。
千早 ありがとうございます。上から目線のようで本当に申し訳ないのですが、読んでいてだんだん上手くなっていると思ったので、書いた順番が気になっていました。納得です。「紅梅色」はなぜ短くしたんですか?
宮田 ページの関係で……(笑)。事前に文字数はいただいてたんですけど、終わらなくて、どんどん長くなっていってしまいました。一番大変だったのは文字数を削ることでした。千早さんはどうされているのですか。
千早 私は文字数によって物語の構成を考えるので、短編を途中から大きく削るのは結構難しいですね。二〇~三〇枚だったらそれに見合った切り口からスタートするし、五〇~六〇枚だったらこういうスタートと変えるので、短くするなら全部書き換えないといけなくなります。「短くしてください」と言われたら「書き直します」って言うと思う。
宮田 これ実は、全部登場人物がちゃんと繋がる予定だったんですが、文字数の関係でなくなっちゃったんです。本当はもう一篇プロットもあったんですけど、入らなくて。
千早 えっ! もったいない! でも、宮田さんはちゃんと相手の要望に応えようとするんですね。
宮田 そうですね、中高の頃は校則を破ったこともなかったです。でも少しずつ好きなことをできるようにチャレンジしていくようになって。
千早 ルールを少しずつ超えていくという強かさがいいですね。
宮田 大学時代、日向坂46の活動で休みも多くて、出席がちょっと足りない授業もあって、教授に直談判したんです。その時に教授から、その分追加で二〇〇〇字以上の読んで面白いものを書いてきてと言われて、レポートに小説をつけて出したりもしました。
千早 そうか、大学に行きながら仕事されてたんですよね。万葉集を学んでいたと。
宮田 そうなんです、専攻が万葉集で。
千早 『きらきらし』の和歌の訳がとても素直で。和歌は二重の意味があったり、時代背景や人物関係を考えると違う意味が出てきたりとすごく思わせぶりな世界のイメージなんですけど、この作品は若くて瑞々しくてまっすぐできらきらしていて、それが訳にも現れているなと思いました。
宮田 ありがとうございます。
千早 写真の方も登場人物になりきっているように感じました。
宮田 今回、小説+写真という構成にしたので、写真は登場人物をちょっとイメージしています。私の写真集、みたいな感じにはあんまりしたくなかった。物語の世界観を崩したくないから、その作品をイメージして撮っていただきました。
千早 写真の中ではネイルが好きな子とかもいて、演じ分けているのかなと楽しく拝見しました。ぶりっ子キャラとよく言われると聞きましたが、ぶりっ子も演じているんですか。
宮田 いえ、ぶりっ子は元々中学生のときからずっと「ぶりっ子」「あざとい」と言われていました。私は褒められていると思っていたので、あとから親に、それってあんまりいい言葉じゃないよ、と言われて、そうなんだ、と。
千早 すごい、素直ですね。清らか。そこで全然悪い気持ちにならない健やかさや強さがまぶしい!
宮田 そうですね。私を形容するのに一番ふさわしかったのかなと(笑)。
千早 「あざとい」はお仕事的には最高だったのでは。
宮田 はい、そうですね。「あざとい」や「ぶりっ子」の様子は、褒めていただくことが多かったです(笑)。