うまくいかないミーティングは、「過去→未来」に視点を変えるだけで激変する

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なぜミーティングで決めたことが実行できないのか

『なぜミーティングで決めたことが実行できないのか』

著者
矢本 治 [著]
出版社
日本実業出版社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784534060013
発売日
2023/03/29
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

うまくいかないミーティングは、「過去→未来」に視点を変えるだけで激変する

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

なぜミーティングで決めたことが実行できないのか』(矢本 治 著、日本実業出版社)の著者は、「ミーティングを通じて人を育て、売上を上げる」をモットーとしているという日本初の「ミーティング専門コンサルタント」。

そんな立場からみた『ミーティング術』とは、はたしてどのようなものなのでしょうか?

ミーティング術は、「短い時間で価値観の異なる複数人をまとめるためのコミュニケーションスキル」です。

ミーティングや会議の場だけでなく、家族での話し合い、地域住民との会合、子どものPTA活動など、何かを決めるときにも使えます。(「はじめに」より)

つまりは学生から年配の方まで、すべての人に役立つ会話のスキルだということであるようです。そして、チームにも個人にも覚えてほしい「ミーティングの成果が出る、みんなが幸せになる方程式」があるのだとか。

成果=アイデア×実行×継続・改善(質)(「はじめに」より)

重要なポイントは、掛け算であるところ。すごいアイデアを引き出せたとしても、行動しなければ結果はゼロ。行動力はあってもアイデアがいまいちなケースにしても、またしかりだということです。さらにはそれに加えて、継続・改善も成果を出すうえで重要な概念。実行したことを検証し、改善と継続を繰り返すことで、「質」はどんどん高まるわけです。

そんな考え方に基づく本書のなかから、きょうは第3章「基本ミーティングステップ1 アイデア・解決策を集める」に焦点を当ててみたいと思います。

成果が出ない会社によくある「会話のパターン」

ミーティングには、成果の出やすいパターンと出にくいパターンがあるそうです。

自覚している人は多くないものの、会社ごとに特有のパターンが存在するというのです。成果が出ないのは従業員に能力がないからではなく、パターンが悪いから。以下が代表例で、これらが「成果の出にくいパターン」の典型であるようです。

・いつも同じ人だけがしゃべっている

・いつも同じ人にだけに意見を求める(そして褒める)

・若手から発言が出ない

・新しいアイデアが出ても、できない理由を挙げて潰されてしまう

・発言内容のレベルが低いとみなされると上位の人が怒り始める

・上位の人など特定の人が話の腰を折り、話を最後まで聴かない

・結論を先延ばしにして何も決めない(決まらない)

(97ページより)

「コミュニケーション不足だから会話が大切」「話すことで活路が見出せる」という部分もあるのでしょうが、とはいえそれだけでは不十分。むしろ“心の溝”がさらにできていき、やればやるほど逆効果になるケースさえあるといいます。

しかし、諦める必要はないようです。なぜなら、パターンは変えることができるから。よいパターンを繰り返せば、それを定着させることが可能になるわけです。(96ページより)

ミーティングでは「未来視点」で話し合いを

ミーティングをよい方向に変えていくために大切なのは、「適切な質問」によって参加者の視点を変えること。なぜなら質問には、相手の思考パターンを変える大きな力があるからだそうです。

なお、質問には大きく分けて「過去視点」と「未来視点」があるのだとか。

まず過去視点の質問とは、「なんでこのクレームが発生したんだ?」「どうして今月の売上が悪いんだ?」というように、起きてしまった過去についてあれこれ問いただす質問。

しかし「なぜ?」という過去視点で質問をすると、「お客様の誤解で…」「他部署の納品ミスで…」など、言い訳じみた反応になってしまうもの。

その結果、上司はさらに怒るという“成果の出ない悪循環パターン”になってしまうわけです。著者によれば、こういった悪循環に無駄な時間をかけているチームは非常に多いのだそうです。

しかし、ダメな理由を導き出す分析そのものに価値はありません。本来、分析をする意味とは、よりよい対策を打つため、すなわち「未来に向けての解決策」を話し合うことなのですから。したがって、忙しいなか、ミーティングのためにわざわざ集まる目的は次のひとつに限ると著者はいいます。

過去にとらわれず、周りのせいにせず、自らの行動で希望ある未来を創造する(100ページより)

ミーティングを行う目的は、部下のモチベーションを下げることでも、犯人探しをして誰かを吊し上げることでも、責任のなすり合いをして最悪のチームにすることでもないからです。(98ページより)

未来視点にするための質問のキーワード「今後は?」

では、未来視点での効果的な質問とはどのようなものでしょう? 著者によればそれは、「今後、どうするか?」だそう。

「商品Zのクレームがきた。経緯は○○で起きた。考えられる原因は□□だと思う」と事実や状況を共有したうえで、

「今後、同じクレームが起きないようにするために、何を改善したらよいだろう?」という質問を参加者に投げかけます。(100ページより)

そうすれば、「なんで? 誰が原因?」という質問するときとは、明らかに答えが変わるというのです。

「なぜ?」という質問は話し合っている【現在】から見ると【過去】に向いた質問です。

「今後は?」という質問は【未来】に向いての話です。(101ページより)

つまり質問の視点がどちらに向いているかによって、ミーティングの参加者である部下の思考パターンも自動的に変わってくるわけです。いいかえれば、部下が前向きな発言をできるかどうかは、リーダーの質問の質の問題でもあるのでしょう。(100ページより)

もし最初はうまくいかなかったとしても、本書で紹介されているメソッドを繰り返し試していけば、必要なことが必ず身につくと著者は断言しています。よりよいミーティングを実現させるために、参考にしてみてはいかがでしょうか。

Source: 日本実業出版社

メディアジーン lifehacker
2023年4月25日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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