『忘れられた日本人』などの著作で知られる民俗学者、宮本常一。日本民俗学の創始者である柳田国男が民間伝承や信仰を重視したのに対し、宮本はそれまで軽視されていた民具などの「もの」に注目した。
それはただ道具としての研究にとどまらず、製法や流通などを広く見ていくことで、かつての生活環境や技術波及の状況など、流動性のある歴史を描く方法論でもあった。日本列島をくまなく歩き、村落共同体が絶えず外部から価値を導入して変化していくものであることを見いだした宮本を、近現代日本を代表する思想家として位置付ける。(講談社現代新書・880円)

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2023年5月28日 掲載
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