部下から共感されるリーダーは、どんな「声かけ」でなかなか動かない部下を動かしているのか?

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共感されるリーダーの声かけ 言い換え図鑑

『共感されるリーダーの声かけ 言い換え図鑑』

著者
吉田幸弘 [著]
出版社
ぱる出版
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784827214024
発売日
2023/06/26
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

部下から共感されるリーダーは、どんな「声かけ」でなかなか動かない部下を動かしているのか?

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

リーダーが「やれ!」と指示命令して部下が動いていた時代とは違い、現代においてはリーダーの力量に差が表れ始めているーー。

そう指摘するのは、『共感されるリーダーの声かけ 言い換え図鑑』(吉田幸弘 著、ぱる出版)の著者。経営者・中間管理職向けに人材育成、チームビルディング、売上改善の方法を中心としたコンサルティング活動を行っているという人物です。

そもそも、リーダーが権力で動かそうとした場合、傘下にいる部下は「自分で動いて叱られたら困る」と感じる可能性があります。そのため、いわれたとおりの動きしかしなくなる可能性が出てくるわけです。すると当然のことながら、リーダーの能力はチームにおいて限界に達してしまうでしょう。

しかしその一方、部下が主体的に動き、明るく業績のよいチームが存在するのも事実。そんなチームのリーダーは、いつも笑っていたり、ときには部下にツッコミを入れられたり、つまりは良好な関係が築けているものだったりします。

著者によれば、そういうリーダーに部下がついていくのは、部下から共感されているから。そして、共感されるかどうかのポイントが「適切な言葉」だというのです。

「適切な言葉」を使うリーダーは部下を主役にし、補佐的な役割に徹します。すると、部下が主体的に動きます。リーダーにはないスキル・能力・アイデアを部下が持っているわけですから、当然チーム力はアップします。(「はじめに」より)

そこで本書では、日々のセミナーやリーダーの方々とのコーチングにおいて好評だった約70種の言葉を厳選しているわけです。きょうはそのなかから、第6章「ネガティブなフィードバックの仕方」に目を向けてみましょう。

部下がミスを報告せず自分でなんとなしようとしていた場合

×モヤッとされる声かけ:何で報告にこないんだよ

○共感される声かけ:報告しづらかったか

悪い報告をしやすい雰囲気をつくるよう心がける

(122ページより)

リーダーからすれば、悪い報告や相談はいち早くしてほしいもの。しかし部下にとって、それは伝えづらいものでもあるはずです。報告後にリーダーが嫌な顔をしたらどうしようなどと考えてしまうかもしれませんし、評価も気になるでしょうから。

著者は、職場においては「無能だと思われるリスク」に直面することが多いと指摘しています。いうまでもなくそれは、「こんなこともできないのか」と思われ、評価を下げられないかという不安。

しかも先行きが読みづらくなった時代においては、リーダーもリスクをとることを恐れてしまうため、つい減点主義に陥りがち。すると部下は、「悪い報告をして怒られたり評価を下げられたりするくらいなら、自分でなんとかことをおさめよう」と考えてしまうわけです。

ところがそうなると、ものごとはより悪い方向に進んでしまう可能性があります。そのためリーダーは、「悪い報告をしやすい雰囲気」をつくるよう心がけるべきなのです。(122ページより)

返事はいいが、なかなか動かない部下へ

×モヤッとされる声かけ:なぜ動かないの?

○共感される声かけ:何から始める?

最初の一歩まで伴走して行動を促す

(124ページより)

やったことのない複雑な仕事やクリエイティブで時間を要する仕事は、なかなかハードルが高いもの。ここでは、そんな状況に関する事例が紹介されています。

部下のCさんはルーティンワークなどの仕事はしっかりこなしますが、企画書作成などの仕事は非常に苦手です。

Cさんは、評価を下げられることを恐れているうえに、失敗して恥をかきたくないとの思いが強くあります。リーダーAさんはCさんに、新しい企画を出すように何度も伝えましたが、相変わらずです。今まではリーダーが立てた企画を実行してもらっていましたが、新入社員も配属され、さすがに一本立ちしてほしいところです。

先日も「なぜ動かないの?」と聞きましたが、「はい」としか言いません。(125ページより)

さて、こんな場合はどうすればいいのでしょうか? 著者によれば、こういうときは「動けない理由」を聞いても意味がないのだそうです。大切なのは、「なにから始める?」と尋ね、一歩動くところまで行動をともにすること。

たしかに、一歩動いてみたら思いのほか簡単で、「どうしていままでやらなかったのだろう」と感じることはよくあるもの。したがって、そこまで伴走することが重要であるわけです。(124ページより)

いつも期限に遅れる部下へ

×モヤッとされる声かけ:なぜいつも遅れるの?

○共感される声かけ:開始期限って決めてる?

「いつから始めるか」をその場で決めてしまう

(128ページより)

締切日の翌日になっても、頼んでおいた報告書を部下が送ってこなかったとしたら、しかもそれが毎度のことであったなら、上司としては「またかよ」と感じても当然。そして、「なぜいつも遅れるの?」と質問したくなるかもしれません。なのに部下が「すみません」としかいわないとしたら、どうすればいいのでしょう?

まず、部下に遅れる理由を聞いたところで、なかなか改善しないでしょう。「なぜ」は人を対象にしたいい方であり、詰問のように感じてしまいます。

相手に責められたときに出てくる回答はきちんと考えたものではなく、その場での言い訳であるケースが少なくありません。(129ページより)

そもそも、仕事が機嫌に間に合わない原因は「着手が遅い」こと。そこで着手を早めてもらうため「開始期限って決めてる?」と聞き、「いつから始めるか」をその場で決めてしまうべきだということです。(128ページより)

7つの章に分かれ、項目ごとに見開き完結となったページ構成。そのため、自分にいま必要な項目からでも読めるわけです。しかもすぐに実践できることばかりなので、活用する価値は大いにありそうです。

Source: ぱる出版

メディアジーン lifehacker
2023年7月4日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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