無理なく無駄なく役に立つ!理想の「たたき台」のつくり方

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仕事がデキる人のたたき台のキホン

『仕事がデキる人のたたき台のキホン』

著者
田中 志 [著]
出版社
株式会社アルク
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784757439924
発売日
2023/07/24
価格
1,760円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

無理なく無駄なく役に立つ!理想の「たたき台」のつくり方

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「たたき台」ということばの前には、「とりあえず、たたき台をつくっておいて」というように、“とりあえず”という枕詞がついてくるもの。しかし『仕事がデキる人のたたき台のキホン』(田中 志 著、アルク)の著者は、この“とりあえず”をなくし、「たたき台」を最強のコミュニケーションツールとして見なおしたいと考えているのだそうです。

そもそも、最初から完璧な企画書や資料をつくれる人はいません。完成度が低いものから始まって、いろいろな人の意見やアイデアを取り込みつつ、次第に完成度を高めていくことになるわけです。そして、その一歩目になるのが「たたき台」。

ちなみに著者によれば、たたき台には2つあるようです。1つは、最終的なゴールに役立つ「叩きやすいたたき台」。もう1つは、出したはいいけれど叩かれもせず、振り向かれもせず、あっという間に葬り去られる「叩きづらいたたき台」。

この2つの違いは、周囲を巻き込み、活発な議論を生み出すことのできる道具になり得るかどうかです。では、どうしたら周囲を巻き込む道具になれるのか。世のなかにはアイデアの発想術や資料のきれいな整え方を指南する書籍はたくさんありますが、たたき台の活用法を伝える本に出会ったことがありません。

そこで私は、「たたき台」の真の効果と使い方についてお伝えしたいと思いました。(「はじめに」より)

新卒で入社したボストンコンサルティンググループ(BCG)で仕事の基本を学び、「たたき台」の重要性を実感した経験の持ち主。BCGでは「たたき台がなければ議論は始まらない」という共通認識があったため、コンサルタントは誰もが、日々せっせとたたき台をつくっていたのだそうです。

つまり本書において著者は、そうした日常を通じて得た「たたき台」に関してのノウハウを明らかにしているわけです。きょうはそのなかから、第2章「たたき台を作るための5つのS」に注目してみたいと思います。

第一のS「スピード」:まずは手を動かす

たたき台をつくるときにはスピードが重要。締め切りを守るのは当然で、さらには依頼された段階で、「3枚くらいでまとめればいいですか?」「いま手元にある情報だけでいいですか?」など確認することも重要。また、頭のなかだけで悩んでいても意味がないので、依頼されたその日からつくり始めるくらいのスピード感が大事だといいます。

「やり直しが必要になるかもしれない」という前提で、1本目の初動を早くします。たたき台は未完成であっていいのです。むしろ、未完成であるからこそたたき台としての意味があるのです。(68ページより)

とにかく満点を狙わず、1時間や1日でつくり、上司や同僚のアドバイスをもとにすぐつくりなおせば、一週間で7回はやりなおせるわけです。

また、スピードを実現するために、たたき台のフォーマットは「ありもの」を使うべき。自分で1から構成を考える必要はなく、先人の知恵を活用すればいいのです。(66ページより)

第二のS「シンプル」:とにかくわかりやすく

たたき台は「わかりやすさ」が重要なので、情報を入れすぎないことがポイント。なおシンプルにするには、次の2点に注意するべきだといいます。

・情報を入れすぎないこと

・デザインに凝らないこと

(76ページより)

たたき台に情報を入れすぎると、読みにくく時間がかかり、全体を把握しづらく、精査できなくなってしまう可能性があるからです。したがって重要なのは、たたき台で大きな流れだけを決めておくこと。そうすれば、他の人からも意見が出やすくなるわけです。(73ページより)

第三のS「刺激」:みんなから反応を引き出す

たたき台は「相手の思考に刺激を与えてナンボ」。批判でも共感でも賞賛でも、たたき台を見たときに相手が「なにかをいいたくなる」ことが重要だということです。そこから議論がスタートし、たたき台は発展していくからです。(79ページより)

第四のS「質問力」:的確に問いかける

たたき台を作成する際には、たたき台の内容はもちろん、作成するなかで生まれた問いや質問をどんどん書き込みます。

企業のアンケート調査を依頼されたら、フォーマットをざっくりと書いてから、「どんな要素でセグメントを切る?」「個人に紐づけたほうがメッセージは打ちやすい?」「BtoBのビジネスだからペルソナは利用者と購買意思決定者で分ける?」などと、自分が疑問に感じていることや思いついたことをどんどん書き込むのです。(96ページより)

そうすることで、たたき台を受け取った相手は「あっ、ここはね」と反応しやすくなるため、有意義な議論に発展させることができるわけです。

なお質問が思いつかないときは、5W1H(Why:なぜ・What:なにを・When:いつ・Where:どこで・Who:誰が・How:どのように)を使うと考えやすくなるそうです。(85ページより)

第五のS「隙をつくる」:固めすぎず突っ込ませる

あえて突っ込む、または会議相手に突っ込んでもらう「隙」をつくることは、相手に反応してもらうための有効な手段。たとえば誰でも取り組める簡単な方法として、著者は「空欄を可視化する」ことをすすめています。

人は空欄があると、無意識に「埋めよう」と考えるもの。そこで、相手に考えてもらいたいときはそこを空欄にしておくわけです。

例えば、「この案件で最も重要なことは何ですか?」と聞くより、「この案件で最も重要なことは□□□である」とたたき台に入れておきます。そして、「この□□□には何が入りますか?」と問いかけます。(101ページより)

隙と質問はとても相性がよいため、こうすることで、自分が欲しい情報を相手からどんどん引き出せるというのです。(100ページより)

活発な議論によって揉まれ抜かれたたたき台は、プロジェクトを成功に導く基盤になり得ると著者は述べています。試行錯誤を重ねつつ、議論の核になるたたき台をつくれるようになるために、本書を参考にしてみてはいかがでしょうか?

Source: アルク

メディアジーン lifehacker
2023年8月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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