【児童書】『きみのそばに いるよ』いぬいさえこ作・絵
[レビュアー] 田中佐和(産経新聞社文化部)
■どこまでも肯定的
森では夜になると、月明かりの下でエゾシマリスやニホンモモンガたちがおしゃべりを始める。
「いままで ずっと がんばって きたんだね」
「きみは でこぼこしているから、いとしいの」
動物たちが悩んでいる友達やわが子に伝える短いメッセージは、どこまでも肯定的だ。
森の小さな愛らしい動物たちを主人公にしたメッセージ絵本。前著『きみのことが だいすき』で好評を博したイラストレーターが「繊細な人のこころに絵でそっと寄り添えたら」という思いで作った。温かみのある絵と言葉に、柔らかな毛布でくるまれるような安心感を抱く。
動物たちが眺める濃紺の夜空に浮かんだ月は、ページをめくるごとに新月、上弦の月、満月…と形を変えていく。私たちの心も月のように満ち欠けを繰り返し、昨日は平気だった言葉に、今日は傷つくことがある。一日の終わりに絵本を開けば、きっとその日、その時の自分や相手の心に染みる、優しいメッセージが見つかるだろう。(パイ インターナショナル・1540円)
評・田中佐和(文化部)