『首都防衛』
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首都直下&南海トラフ 確実に迫る「大連動」
[レビュアー] 佐藤健太郎(サイエンスライター)
この九月は関東大震災百周年ということで、防災に関する報道が相次いだ。とはいえ、今後四〇年以内に南海トラフ巨大地震が起きる確率は九〇パーセント程度だと聞いても、具体的に何をすればよいかわからないというのが本音だろう。
だが、危機は確実に迫っている。特に恐れるべきは、首都直下及び南海トラフでの大地震、富士山噴火という、どれ一つとっても破滅的な巨大災害が続けざまに起きる「大連動」だ。これは絵空事やSFではなく、過去の日本で実際に起きたことだ。
『首都防衛』の著者宮地美陽子は、小池百合子都知事の下で政務担当特別秘書を務める人物。本書では、予測される巨大災害の全容、これに備えた東京都の取り組みを紹介する他、我々にもできる防災対策について紹介する。
震災対策は大小さまざまあるが、その第一歩は「関心を持つこと」だろう。いざ災害という時にどんなことが起こりうるのかを知るだけでも、生存確率は段違いだ。本書に掲載された、地震学者たちが行っている対策は具体的ですぐにでも参考にできる。自宅の耐震補強に二の足を踏む人も、各種補助金が出ることを知れば考えも変わるだろう。
本書の内容は首都と南海トラフの地震がメインだ。しかし災害は、常に思いがけぬ場所を思いがけぬ形で襲うものであり、日本に住む誰もが他人事では済まされない。皆が自分の問題として捉えることで、被害は大きく減らせるはずだ。