『いつかみんなGを殺す』成田名璃子著

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いつかみんなGを殺す

『いつかみんなGを殺す』

著者
成田 名璃子 [著]
出版社
角川春樹事務所
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784758414425
発売日
2023/05/15
価格
1,980円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

『いつかみんなGを殺す』成田名璃子著

[レビュアー] 池澤春菜(声優・作家・書評家)

 タイトルで優勝。

 老舗ホテル、グランド・シーズンズは、最大の山場とピンチを同時に迎えていた。年に一度のイベント目前にして、お得意様の歌舞伎役者の愛Gが逃げ出してしまったのだ。Gに向かって見得(みえ)を切ればどんな大舞台も成功する、その験担ぎのために用意された、とびきり大きくてつやつやで頭のいいビッグG。イベントを成功させたい若きホテル支配人、その彼女を蹴落としたい副支配人、謎めいた清掃員に神経質なシェフ、夢破れたピアニスト、大スター、プロの殺G鬼。それぞれの思惑が交錯し、今ドラマの幕が開く!

 また登場人物の名前がヒドい(褒め言葉)。硼酸次(ほうさんじ)、蜚(ひ)●(れん)、霧吹に泡村、艶漆、姫黒、そして極めつきは穀句(こっく)ローチ。

 たたみ込まれる怒濤(どとう)の展開、人間関係、阿鼻叫喚(あびきょうかん)のクライマックスを経ての最後のシーンで悔しいけどめちゃくちゃ感動してしまった。それぞれが心(と現実)のGに立ち向かい、大きく成長するのだ。

 とはいえGを必殺プリンセス・ドリルで退治する覚悟は、わたしにはまだない。(角川春樹事務所、1980円)

読売新聞
2023年10月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

読売新聞

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