人工知能(AI)が普及する中、膨大なデータを処理するコンピューターを駆使した文学作品の解析も進む。北米で発展したそんな研究手法を日本文学に適用した成果をまとめている。
例えば葛西善蔵らの私小説と、プロットを重視した大衆小説との比較分析。作品の語彙を解析すると、私小説は「思う」などの認知や感情を表す動詞の数が大衆小説の約1・5倍に上る一方、会話の量は少なかったという。私小説には「沈思黙考型」の人物が多いことが分かる。膨大な作品を網羅する数と量の力で、文学研究の新たな可能性が見えてくる。(フィルムアート社・4400円)
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2023年10月22日 掲載
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