7つのマインドセットでリスキリングを成功に導く!

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リスキリング

『リスキリング』

著者
後藤 宗明 [著]
出版社
日本能率協会マネジメントセンター
ジャンル
社会科学/経営
ISBN
9784800590473
発売日
2022/09/30
価格
2,035円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

7つのマインドセットでリスキリングを成功に導く!

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

いまから1年ほど前、『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』(後藤宗明 著、日本能率協会マネジメントセンター)という書籍をご紹介したことがあります。タイトルからもわかるとおり、『新しいスキルで自分の未来を創る リスキリング 【実践編】』(後藤宗明 著、日本能率協会マネジメントセンター)はその「実践編」。

ちなみに前著のなかで、著者はリスキリングを「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」と定義づけています。そこに端を発する本書では、すぐに役立てられそうなリスキリングのメソッドを提案しているわけです。

前作は、僕が2016年から開始した欧米におけるリスキリングの成功事例の調査や、40歳から開始した自分自身のリスキリング経験から書かせていただきました。

そして本書はその第2弾として、リスキリングに取り組む皆さま向けに、具体的な事例も交えた実践編としての位置づけで、新たに書かせていただきました。(「はじめに」より)

こう述べる著者は、2021年に日本初のリスキリングに特化した非営利団体である一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立した人物。日本全国にリスキリングの成果をもたらすべく、政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行っているそうです。

つまり本書には、そうした活動を通じて得たリスキリングに関するノウハウが凝縮されているわけです。きょうは第1章「マインドセット(リスキリング準備編)」のなかから、「リスキリングに必要なマインドセットを身につける」に焦点を当ててみたいと思います。

改めて注目される「グロースマインドセット」とは

著者によれば、スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授が2006年に出版した『Mindset: The New Psychology of Success』で紹介された「グロースマインドセット」という考え方がふたたび脚光を浴びているのだそうです。

マインドセットとは、人間が持つ固有の考え方を指しますが、本の中で、マインドセットには、グロースマインドセット(成長思考)とフィックストマインドセット(硬直思考)があると紹介されています。

グロースマインドセットは、努力次第で自分の能力を成長させることができるという考え方、フィックストマインドセットは、生まれつき能力は決まっているので変わらないという考え方です。(60〜61ページより)

たとえばマイクロソフトでは、このグロースマインドセットに基づいて、know it all(すべてを知っている)という硬直的な考え方から、learn it all(すべてを学ぶ)へと意識改革が行われたのだとか。

すべてを知っているという思考だと、失敗できないという呪縛に囚われ、挑戦を避けるようになってしまう可能性があります。しかし「自分たちは知らないのだから、失敗しながら学んでいこう」と考えれば、挑戦していけるわけです。

とくにリスキリングを進めていくうえでグロースマインドセットの考え方が大切なのは、企業が未踏の新規事業に挑戦するために必要なスキルを従業員が身につけることが必要になるからだといいます。(60ページより)

成功に導く「7つのリスキング・マインドセット」

そこで著者は、グロースマインドセットの考え方を活かして、リスキリングを成功に導く大前提となる「7つのリスキング・マインドセット」を紹介しています。それぞれを確認してみましょう。

1.「まずやってみる」を心がけよう

正解へのたどり着き方はあとから考える

なにより大切なのは、「まずやってみる」という初動。慎重さが重視される日本のビジネスにおいては「様子をうかがってから動く」といった姿勢が多く見受けられるかもしれませんが、その行動が正解か否か、成功するか失敗するかなどを考える前に、まずやってみる、試してみる、その結果、自分に湧き上がってくる気持ちを正直に受け止めるといった習慣が大切だということ。

過去事例や他社事例を調べて、知っているつもり、分かったふりの状態で物事を判断するのと、実際にやってみて感じ取った気持ちを優先するのでは、理解度や納得度が異なります。

2. コンフォートゾーンから飛び出そう

健全な危機感を持つ

個人が健全な危機感を持ちながらリスキングに取り組むことは、よいことだと著者は主張しています。

コンフォートゾーンから出たら、「居心地の悪い状態に慣れる」ことができるかどうかがリスキングの成否を分けます。

自分にとっては未知の領域で挑戦し続けることは最初は居心地が悪いかもしれませんが、慣れてしまえば、その状態を続けられるようになります。(63ページより)

3. 6割理解のままで突き進もう

「知らない」を恐れない

初めての分野では、「知らない」ことが当たり前。とにかく動いてみて、全体像がつかめたらしめたものだということです。つまり、細かいことは後回しでOK。

何度も同じ道を通るうちに、細かいことはだんだんわかってくるようになるものだからです。

4.何度でも同じプロセスを繰り返そう

「忘れた」で落ち込まない

リスキングで成果が出るまでには時間がかかるもの。知らない分野の専門用語がたくさん出てくることもあるので、しっかり理解できるまでには忘れてしまうこともあって当然。

また、一時的な記憶力が勝負の世界ではないので、覚えたことを忘れてしまっても落ち込む必要はなし。業務を通じて何度も繰り返していくことで、記憶が定着していくからです。

5. いつでも軌道修正しよう

何度でも方向転換OK

チャレンジしてみた結果、想定と違ったと感じることはあるもの。向いていないことが明らかになるケースもあるでしょう。したがって「一度決めたから最後までやり通す」とこだわらず、いつでも柔軟に軌道修正をするべき。

自分の将来の方向性を決めるリスキリングを行うのですから、自分が楽しくなく、興味が湧かないことをやり続けるのは結果的に成果に結びつかない確率も高くなります。(64ページより)

6. すぐに成果が出なくても焦らない

しなやかなレジリエンス

リスキリングは短距離走ではなく、マラソンのような長距離走。途中でさまざまな障害があったり、ストレスがかかることもあるでしょう。その結果、焦ってしまうことも考えられます。

しかし、仮にネガティブな状態になってたとしても、しなやかに回復する力である「レジリエンス」があれば問題なし。すぐに成果が出なくて焦ったり、落ち込んだりしても、すぐに回復して継続できることが大切なのです。

リスキリング継続の鍵は「レジリエンス」にあります。(65ページより)

7. 発展途上の自分に自信を持つ

リスキリングがすぐに成果の出るものではない以上、新しいことに挑戦している自分を肯定したり、取り組んでいるプロセスそのものを信じることが大切。

いま発展途上にある自分に自信を持つことができると、上記1〜6のマインドセットを維持しながらリスキングに取り組むことができるわけです。

僕自身、40歳からリスキリングに取り組み始め転職活動で評価されなかった当時を振り返って、完全に「発展途上の自分に自信を持つ」ことができていたかというと、答えはNOです。

ですが、これまでに全く経験のない新しいことに挑戦し、自分で納得のいく成果を出すことが何度かできていたので、「発展途上の自分」の状態に身を置くことができていたのだと思います。(65ページより)

つまり、「リスキリングに取り組んでいる自分に自信を持つ」ことが、リスキリングによって自分の就きたい仕事に就くための原動力になるということです。(61ページより)

リスキリングによって成果を上げることは、決して簡単ではないでしょう。しかし、リスキリングを進めていくうえでのガイドブックとして本書を活用すれば、やがて理想的な結果に結びつくかもしれません。

Source: 日本能率協会マネジメントセンター

メディアジーン lifehacker
2023年10月23日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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