「黒柳徹子」が戦争に反対しユニセフで子どもを支える理由…42年ぶり続編「窓際のトットちゃん」を読む

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

続 窓ぎわのトットちゃん

『続 窓ぎわのトットちゃん』

著者
黒柳 徹子 [著]
出版社
講談社
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784065296714
発売日
2023/10/03
価格
1,650円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

42年ぶり続編はパパとママの話から。空白だった少女から大人になる時代

[レビュアー] 東えりか(書評家・HONZ副代表)

 1981年に刊行された『窓ぎわのトットちゃん』は現在まで読み継がれ空前のベストセラー、ロングセラーとなっている。日本人のほとんどが「トットちゃん」は黒柳徹子だと知っているってすごいことだ。

 さらに芸歴70年で今も第一線で活躍し、冠番組の「徹子の部屋」は2023年9月に、同一司会者によるテレビ番組最多放送のギネス記録を更新した。黒柳徹子さんは生ける芸能史そのものなのだ。

 前作の『窓ぎわのトットちゃん』は普通の小学校には馴染めないちょっと風変わりな女の子である徹子が、両親の愛とトモエ学園という自由な校風の学校に育まれて伸び伸びと育っていく姿を描いていた。

 42年ぶりの続編はパパとママの話から始まる。日本を代表するヴァイオリニストの黒柳守綱が東洋音楽学校に通うママと出会ったのがベートーベン第九交響曲の演奏会の舞台だったというのはロマンティックだ。

 裕福な夫婦の最初の子で「トット助」と父から可愛がられ、弟妹と一緒に暮らした幸せは戦争で断たれる。ひもじさ、寒さ、空襲警報の恐ろしさに加えて、泣くことも許されない戦争へ父親が動員されたのが昭和十九年。ヴァイオリンを持たず、頭を丸坊主にされ、ヨレヨレの軍服を着た父親の姿がよほど印象的だったのだろう。トットの記憶は精緻だ。

 疎開先の青森で終戦を迎えると一家は東京に戻る。女学校に通い思春期を迎え、父がシベリアから復員した後にトットが決めた将来は、子どもに上手に絵本を読んであげるお母さんになること。その修業のために選んだ仕事が70年も続くとは想像もしていなかったに違いない。

 この先の話は映画やテレビドラマにもなった『トットチャンネル』(新潮文庫)に詳しいが、空白だった少女から大人になる時代を描いたのが本書だ。精力的に戦争反対を訴え続け、ユニセフで子どもたちを支える活動の源はここにあった。

新潮社 週刊新潮
2023年11月2日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク