パスタ食べる人も…あくびやメモまで見える池袋演芸場、マニアックな客が増えた新宿末廣亭 落語家と落語好きの女優が語った寄席の魅力

対談・鼎談

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今日も寄席に行きたくなって

『今日も寄席に行きたくなって』

著者
南沢 奈央 [著]/黒田 硫黄 [イラスト]
出版社
新潮社
ジャンル
芸術・生活/諸芸・娯楽
ISBN
9784103553311
発売日
2023/11/01
価格
1,870円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

南沢奈央×蝶花楼桃花・対談「明日も寄席が楽しくて」(前編)

[文] 新潮社


南沢奈央さんと蝶花楼桃花さん

 舞台やテレビドラマで活躍する一方、書評などの執筆活動も精力的に行っている俳優の南沢奈央さん。多才で知られる彼女の初の著書『今日も寄席に行きたくなって』(新潮社)のテーマは、落語です。

 落語好きが高じ、20歳の時に赤坂BLITZの寄席イベントで初高座に上がって「雛鍔」を演じたこともある南沢さん。落語協会会長の柳亭市馬師匠が名付け親となり、「南亭市にゃお」という高座名まで持っているといいます。

 落語の世界に惚れ込む南沢さんの溢れる落語愛と寄席への思いとは? 2022年に真打に昇進した注目の落語家・蝶花楼桃花師匠を迎え、落語の世界や寄席の裏話、そして落語界の新しい展開について語り合います。

(※この記事は前後編の前編です)

「これやりたい」で飛び込んだ

南沢 あらためて桃花師匠、真打昇進おめでとうございます(桃花師匠は2022年3月に真打に昇進し、春風亭ぴっかり☆から蝶花楼桃花に改名した)。

桃花 ありがとうございます。まだ二つ目の時に南沢さんとお会いしたのですが、その折の話もご著書『今日も寄席に行きたくなって』に入っていて、嬉しかったです。

南沢 この本の元になった連載を「波」で始めて、落語や寄席についての勝手な思いを書いていたのですが、ふと、若手落語家の方がどんなふうに芸と向き合ったり、日常を送っているのかを知りたくなって、真打昇進直前の時期のぴっかり☆さん、今日の桃花師匠にお話を伺いました。それがきっかけで、恐れ多くも師匠と私の二人会を池袋演芸場で開き、落語(新作「前座ぽっぽ伝説」と「厩火事」)を披露する機会もいただいて……本当にお世話になりました。

桃花 ご本からは、タイトル通り、南沢さんの寄席への愛がすごく伝わってきました。私はいきなり「落語(これ)やりたい!」ってぽんっとこの世界に入ったタイプだから、「寄席に通い詰めて、ネタに詳しくなって、お目当ての芸人さんを持って」みたいなことをしてないんです。だからすごく羨ましかった。

南沢 趣味だから楽しいんですよ。高座に上がるなんて考えたこともなかったです。

桃花 自分にも、趣味として落語に接する時間がもっとあったら良かったなあと羨ましくなったぐらい素敵な本でした。何より「寄席は楽しい」ことを熱く伝えてくれているのが嬉しかったです。これを読んだら、「一回寄席ってところに行ってみよう」と絶対思ってくれますよ。

南沢 最初に落語を聴き始めた時は、全然知識がなくて。でも知ったらもっと楽しいだろうな、と思ったんです。だから、寄席に行く時はいろんな演目を解説している本を持って行って、「今のはこの噺かな?」って調べたりしてました。

桃花 「今のは『狸賽』って言うんだ!」みたいな。

南沢 知らないで聴いても楽しかったんですけど、その噺を何回か聴いた上で、「あ、来た来た」という感じもまた楽しいんですよね。こうして中毒になるというか。

桃花 知れば知るほど中毒になっていく。まあ沼ですよね。どの世界も同じかもしれないけど、寄席は特にそうなんです。寄席も入るまではコワイ場所と思うかもしれないけど……。

南沢 女性ひとりでも大丈夫です(笑)。感激したのは、師匠と池袋演芸場に出させていただいた時、「楽屋、本当にこんなに狭いんだ」。落語家の方がときどきマクラでボヤくのは真実だった(笑)。

桃花 池袋の楽屋は四畳ですからね。あのスペースに最大八人は入ります。畳一畳に二人。

南沢 その状態で着替えもされるわけですよね?

桃花 だから前座は半畳のスペースで着物を畳む訓練もするんですよ。

着付け/山口さくら ヘアメイク/高畑奈月 衣装協力/branch(以上、南沢氏) 撮影/青木登

新潮社 波
2023年11月号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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