自分と向き合って対話する。メンタルケアとしての日記を小説に
[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)
『嫌われる勇気』共著者によるこの本。自分に自信のないいじめられっ子の中学生・タコジローが学校に行けなかった日に公園でヤドカリのおじさんに出会い、日記を書くことをすすめられる。丁寧に自分と向き合い対話していく方法、自分自身でできるメンタルケアとしての日記の重要性をただのハウツー本ではなく小説として読ませてくれる。私自身、自分の心を剥き出すにはペンとノートが最適だと思っている。スマホのメモ帳機能でもいいけれど、考えがまとまっていないまま“文章を書いてみる”うえでは親指だけでなく手を動かさないと得られないものがあると信じているのだ。日記はなかなか書けないのだが、学生の頃から白いノートに細切れに自分の考えを書いて、自問自答を繰り返していた。それを私はアイデアノートと呼んでいたけれど、ヤドカリのおじさんからすれば日記でもあったかもしれない。
どの世代にも刺さる内容ではあるが、タコジローと同じ10代向けに書かれていることもあり、文章を書くのが苦手だったり、得意でもどうしても先生ウケのいい文章ばかり書いてしまう子に読んで欲しい。この本に出会って救われる子がたくさんいるだろうな、自分が10代の時に読んでいたら、もやもやした思春期がもっと晴れやかなものになっていただろう。
そして読んだあとに日記を書いてみたいと思うはずである。私も読了後まんまと2024年版の日記帳を手に入れてしまった。すでに日記を書いている人は書き方が変わるかもしれない。自分に起こった出来事が何年か後に笑い話になるように、読み返して面白い物語になるように、一生懸命書いて生きていこう。巻末には「もしも書くのが止まってしまったら、これを開けるように」と書かれた袋とじがついている。来年の日記が三日坊主になってしまったら開こうかな……いや、そうならないように頑張ろう。