『はじめましてあかちゃん』
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不安と戦うお母さんへ、そして全ての産婦人科の待合室に!
[レビュアー] 夢眠ねむ(書店店主/元でんぱ組.incメンバー)
10月に出産したのだが、妊婦の頃はX(旧Twitter)で情報収集をしていた。つわりの時に食べられそうなものや、妊娠出産に伴う諸々の手続きマニュアル、先輩ママたちの買って良かったものリストなどなど。拾い集めていたのはお得情報だけではなく、同じ時期に妊娠している人たちの生活や気持ちの投稿を見て共感したり、妊娠出産レポ漫画を読んでメンタル面でも助けられた。そのときおすすめに流れてきて出会ったのがusaoさんの漫画である。
妊娠中にチェックしていた漫画が自分の出産日あたりに書籍になると知り、運命を感じつつ購入。漫画は出産レポではなく(生まれるシーンはたった1コマ!)、その前後の気持ちが繊細に描かれている。副題の“赤ちゃんより泣いちゃう母親の絵日記”というのがまさにぴったりで、彼女はよく泣く。明るいのにネガティブな彼女が、根明だけど心配性の自分に重なって、1コマ1コマがじんわり沁みる。自分と同じように寂しいとも悲しいとも言えない底無しの不安な気持ちと戦っている人がいるんだと、こちらも一緒に泣いてしまうのだ。赤ちゃんがわんわん泣くのは母親に甘えてるからという内容があって、そうだよねと安心してまた泣いてしまう。ちょいちょい出てくる“生まれる前の赤ちゃん”の描写が可愛くて、泣いちゃうだけじゃなくクスッと笑えるのもありがたい。
巻末に私がusaoさんに出会うきっかけの漫画が載っていて、ダバダバに号泣しながら本を閉じた。
人生で初めて経験することへの不安をたっぷり抱えながらどうにか“大丈夫になりたい”自分が、生まれたての泣いている赤ちゃんに“大丈夫だよ”と伝えるのってとんでもなく愛情だ。この本、産婦人科の待合室に置いてあったら救われる人が絶対いる。待合室でここまで泣いちゃうのはまずいかも知れないけれど、これを読んでいる産婦人科で働いている方、ぜひご検討ください。