『温泉旅行の近現代』高柳友彦著

日本人が古代から親しんできた温泉。だが現在のような身近なレジャーとしての「温泉旅行」の歴史は、そこまで古くない。本書は江戸から現代までの温泉地の変遷を、利用者の視点で描く通史だ。

近世では療養が主目的だった温泉旅行だが、近代に入ると鉄道開通や各地での温泉地開発などで、徐々に観光の側面が大きくなっていく。そして最大の転換点は戦後の高度成長期。国民皆保険など医療制度の充実と並行して、温泉旅行は行楽色を強めていった。大浴場に併設する形の「露天風呂」の普及が１９８０年代以降と比較的最近なことなど、意外な情報も多い一冊。（吉川弘文館・１８７０円）

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