高倉健が椅子に座らなかった理由が明らかに? 吉田豪が芸能スキャンダルのディティールを読み解く

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高倉健が椅子に座らなかった理由が明らかに? 吉田豪が芸能スキャンダルのディティールを読み解く

[レビュアー] 吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター)

 ボクは芸能スキャンダルについて相当詳しいと自負しているので、この本で取り上げられた出来事はもちろん全部知っている。しかし、細かいディテールについてはまだまだ知らないことが多いと気付かされたので、それについて報告してみたい。

 たとえば松坂慶子の結婚である。

 1991年1月、怪しげな長髪ギタリストと彼女の結婚会見が行われたとき、小坂一也や深作欣二との関係で知られる恋多き女とのギャップが騒がれたことはよく覚えているが、「意外にもこの模様が大きく取り上げられることはなかった。会見の1時間あまり前に湾岸戦争が開戦したのが理由である。各局とも緊急特番態勢となり、ワイドショーは全面放送中止、テレビでの放映はほとんどなしになった。新聞も1面ではなく芸能面での扱いに」って、そんなこと記憶の片隅にも残ってなかった!

 そして、個人的に最大の衝撃だったのが高倉健と江利チエミの離婚時のあるエピソードだ。「夫婦の家に家政婦として入り込んでいた江利の異父姉Y子が2億円を横領。さらに高倉にまで触手を伸ばしていたこと」が原因で離婚したことは知っていたが、問題は離婚会見の話。「71年9月3日、それぞれが別の場所で記者会見を開いた」のはいいが、なぜか高倉健サイドは「銀座の東映本社で会見に臨む手はずとなっていた。ところが、本人は姿を見せず代わって当時の岡田茂東映社長(故人)が『高倉君はいま痔の手術で入院しております』と説明した」らしいのである!

 普通に「入院した」とだけ言って終わらせればいいのに、なぜ「痔の手術」という余計なディテールを加えたのか? 気になって「高倉健 痔」で検索しても何の情報も引っ掛からなかったから事実かどうかは謎なんだが、そのせいで「高倉健はストイックだから撮影の休憩でも決して椅子に座らない」伝説の裏にも、何か座れない理由があった気がしてきたのであった。

新潮社 週刊新潮
2016年4月28日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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