女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言 三砂ちづる 著

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女たちが、なにか、おかしい おせっかい宣言 三砂ちづる 著

[レビュアー] 橋本克彦

◆思い込み解きほぐす

 どこから読んでも挑発ぎみで面白いエッセイだ。冒頭いきなり帝王切開で出産したお母さんが「麻酔をかけられての帝王切開だから…、すばらしい出産にならなかった」と思い込む心理が報告される。男性である評者はそいつはおかしいと身を乗り出す。が、帝王切開のお産はイージーだから格落ち出産であると思う風潮があるらしい。もちろん著者はそんなこと気にするな、と言う。だが、若いお母さんは気にする。その思い込みがおかしいのである。そのほかにもいまどきの若い女性は小さいが深刻な悩み、思い込みをしているという観察があげられる。

 「性と生殖」を専門分野とし、名門女子大国際関係学科教授の著者は海外での現場経験も豊富である。その学識経験からいまどきの女性に「おせっかい」したくなるという気持ちがよく理解できる。

 「なにか、おかしい女たち」へ言いたくなることがあげられる。股(また)に布、キューバ滞在経験、見えているもの、皿から虫が出てくる父の話、団塊世代とフリーセックスと同棲(どうせい)など、ランダムな話題のようでいて著者が支持する渡辺京二の「生の原基」の上に立ち上がった社会現象への視線は優しく厳しい。とりわけ女性の自己実現を巡る強迫神経症的思い込みについての考察に賛成し、おかしいのは日本社会だと、つけ加えておく。
(ミシマ社・1728円)

<みさご・ちづる> 1958年生まれ。津田塾大教授・作家。著書『女が女になること』。

◆もう1冊 

 三砂ちづる著『オニババ化する女たち』(光文社新書)。思春期の体、性や出産について世代をつなぐ捉え方を考える。

中日新聞 東京新聞
2017年1月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

中日新聞 東京新聞

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