【話題の本】『夫の後始末』曽野綾子著

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 ■夫婦の強い信頼関係伝わる

 昨年2月に91歳で亡くなった作家の三浦朱門さん。妻で作家の曽野綾子さんは平成27年秋から1年半、自宅で衰えゆく夫の介護に努めた。本書は、その在宅介護生活と看取(みと)りまでをつづったエッセーだ。

 講談社によると、昨年10月に初版1万5000部でスタートし、徐々に部数を伸ばして現在8刷12万部と非常に好調。「大部数の初版を初速で売り切るタイプのベストセラーが多いなか、2~3週間ごとに増刷を重ねて10万部を突破するという最近珍しい売れ方。着実に読者の心を掴(つか)んでおり、今後もさらに伸びると感じている」(同社宣伝部)という。

 介護手記というと一般につらい、苦しいというイメージがある。ましてや文壇きってのおしどり夫婦として知られ、63年連れ添った仲である。曽野さんも寂しくないわけがないのだが、その筆致はあくまで恬淡(てんたん)、お涙ちょうだい的な湿っぽい部分がない。もとより介護は大変な重労働だが、それを知恵と柔軟性を用いて日常の中に組み込み、何とか耐えられるものにしていく生活者としての強さが印象的だ。ぶっきらぼうな書名にも、かえって夫婦の強い信頼関係が感じられる。(講談社・926円+税)

 磨井慎吾

産経新聞
2018年1月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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