第69回読売文学賞が決定 小説賞に東山彰良『僕が殺した人と僕を殺した人』ほか

文学賞・賞

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 第69回読売文学賞の各賞が1日(木)に発表され、小説賞に東山彰良さんの『僕が殺した人と僕を殺した人』(文藝春秋)が選ばれた。

『僕が殺した人と僕を殺した人』は、第34回織田作之助賞受賞作。2015年にアメリカで逮捕された連続殺人鬼「サックマン」をめぐる謎と10年前に台湾で過ごした少年たちの運命を描いた青春ミステリー小説。

 文芸評論家の池上冬樹さんは、本作について「ミステリ的構成を逆手にとって、謎は解かれるよりも解かれないほうがはるかに輝くことを、青春小説の文脈で十二分に示している」(中日新聞社・書評欄)と評している。(https://www.bookbang.jp/review/article/533262

 著者の東山彰良さんは、1968年台湾生まれ。5歳まで台北で過ごし、9歳の時に日本に移る。福岡県在住。2002年に「タード・オン・ザ・ラン」で第1回「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞を受賞。翌年、同作を改題した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』で作家デビュー。2009年に『路傍』で第11回大藪春彦賞受賞。2013年に刊行した『ブラックライダー』が「このミステリーがすごい!2014」第3位、第5回「AXNミステリー 闘うベストテン2013」第1位となる。2015年には『流』で第153回直木三十五賞を受賞している。

 そのほか「戯曲・シナリオ」、「評論・伝記」、「詩歌俳句」、「研究・翻訳」、「随筆・紀行」の5部門が発表されており、戯曲・シナリオ賞は受賞作なし、評論・伝記賞は毎日新聞の記者で石牟礼道子資料保存会研究員・米本浩二さんの『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』(新潮社)、随筆・紀行賞は東京大学・獨協大学名誉教授の保苅瑞穂さんの『モンテーニュの書斎 「エセー」を読む』(講談社)、詩歌俳句賞は俳誌「秋草」を主宰する山口昭男さんの句集『木簡』(青磁社)、研究・翻訳賞は東京外国語大学名誉教授の関口時正さんが翻訳したボレスワフ・プルス『人形』(未知谷)が受賞した。

 贈賞式は2月21日に東京都内で行われ、受賞者には正賞の硯と副賞の200万円が贈られる。

 読売文学賞は、1949年に読売新聞社が創設した文学賞。過去1年間に発表された作品を対象とし、「小説」、「戯曲・シナリオ」、「評論・伝記」、「詩歌俳句」、「研究・翻訳」、「随筆・紀行」の全6部門の作品を選出する。第69回の選考委員は、池澤夏樹(作家)、伊藤一彦(歌人)、小川洋子(作家)、荻野アンナ(作家、仏文学者)、川上弘美(作家)、川村湊(文芸評論家)、高橋睦郎(詩人)、辻原登(作家)、沼野充義(文芸評論家、ロシア・東欧文学者)、野田秀樹(劇作家)、松浦寿輝(詩人、作家、批評家)、渡辺保(演劇評論家)が務めた。

第69回読売文学賞 各賞の受賞作
小説賞:『僕が殺した人と僕を殺した人』東山彰良[著]文藝春秋
戯曲・シナリオ賞:受賞作なし
評論・伝記賞:『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』米本浩二[著]新潮社
随筆・紀行賞:『モンテーニュの書斎 「エセー」を読む』保苅瑞穂[著]講談社
詩歌俳句賞:『木簡』山口昭男[著]青磁社
研究・翻訳賞:『人形』ボレスワフ・プルス[著]関口時正[訳]未知谷

Book Bang編集部
2018年2月6日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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