『明日への一歩』
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『明日への一歩』津村節子著
[レビュアー] 産経新聞社
平成18年に逝った夫、吉村昭と半世紀以上にわたった作家同士の夫婦の歩み、文学の師、友との日々を振り返る41編のエッセー集。吉村の手紙から結婚当初を振り返るくだりでは、生活に困り、旅先で「死んでしまおうか」と漏らしたことなど、苦難のなかから作品を紡いできた思いをしのばせる。
夫亡き後も、外出先や家で〈よく一人で喋(しゃべ)っている〉かと思えば、愛しい故郷・福井のふがいなさに〈私は怒っているのである〉と愛ある叱咤(しった)の意気軒高ぶり。
〈生きている限りペンをはなすことはないだろう〉-。あとがきに記す著者の決意は頼もしい。(河出書房新社・1600円+税)