直木賞受賞作『少年と犬』は機能不全に陥ったこの国情景を描いた諷刺小説

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 7月21日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『一人称単数』が獲得した。
 第2位は『気がつけば、終着駅』。第3位は『チンギス紀(8)杳冥』となった。

 4位以下で注目は5位に『少年と犬』。第163回直木三十五賞を受賞した馳星周さんの連作集。書評家の杉江松恋さんは《人生のゆがみに気づきつつも手が打てずにいる者たちが本書の主役》とし、そんな彼らの前に《どんなに孤独に感じても決して一人ではないのだと示す、神の恩寵(おんちょう)のように》犬があらわれるという。また人と犬とのパートナーシップを描くだけではなく、《関わるひとびとはみな、この時代を生きるがゆえの大きな問題を抱えている。老いや病の不安、男女の社会格差、貧困生活の残酷さといった罠(わな)に足を取られているのだ。二〇一〇年代に日本は国ぐるみの機能不全に陥った。その姿が、情景として切り取られていく諷刺(ふうし)小説でもある》と解説している。
https://www.bookbang.jp/review/article/628323

1位『一人称単数』村上春樹[著](文藝春秋)

6年ぶりに放たれる、8作からなる短篇小説集 「一人称単数」とは世界のひとかけらを切り取る「単眼」のことだ。しかしその切り口が増えていけばいくほど、「単眼」はきりなく絡み合った「複眼」となる。そしてそこでは、私はもう私でなくなり、僕はもう僕でなくなっていく。そして、そう、あなたはもうあなたでなくなっていく。そこで何が起こり、何が起こらなかったのか?「一人称単数」の世界にようこそ。(文藝春秋ウェブサイトより)

2位『気がつけば、終着駅』佐藤愛子[著](中央公論新社)

96歳を迎えた佐藤愛子さん。『婦人公論』への登場も半世紀あまりにおよぶ。初登場の「クサンチッペ党宣言」「再婚自由化時代」から、最新の橋田壽賀子さんとの対談まで、エッセイ、インタビューを織り交ぜた、選りすぐりの一冊。(中央公論新社ウェブサイトより)

3位『チンギス紀(8)杳冥』北方謙三[著](集英社)

大きな戦が終わるも、勇者たちはそれぞれに生き延びた。そして、運命の光と闇が、すべての者に襲いかかる。 モンゴル族の統一をかけた大きな戦いに結着がつくも、敗れた者たちはそれぞれに生き延びる。その中には、命ある限りテムジンの首を狙い続ける者もいた。テムジンはモンゴル族統一後も、遊牧だけではない生活を見据え、積極的に動く。軍の南の拠点となるダイルの城砦を訪れ、さらに大同府へと向かう。大同府には、かつて一時期を過ごした蕭源基の妓楼があった。そこでテムジンは轟交賈の男と出会う。しかし、そのような状況下、草原を生きる者たちに激震をもたらす出来事が、ふたたびテムジンを待ち受けていた。好評第八巻。(集英社ウェブサイトより)

4位『いちねんかん』畠中恵[著](新潮社)

5位『少年と犬』馳星周[著](文藝春秋)

6位『流浪の月』凪良ゆう[著](東京創元社)

7位『俺の残機を投下します』山田悠介[著](河出書房新社)

8位『デスマーチからはじまる異世界狂想曲(20)』愛七ひろ[著]shri[イラスト](KADOKAWA)

9位『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ[著](新潮社)

10位『蜘蛛ですが、なにか?(13)』馬場翁[著]輝竜司[イラスト](KADOKAWA)

〈文芸書ランキング 7月14日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2020年7月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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