本屋大賞受賞作『52ヘルツのクジラたち』 謎が解けて浮き彫りになる「あまりにも悲痛な愛の形」

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 4月20日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『52ヘルツのクジラたち』が獲得した。
 第2位は『白鳥とコウモリ』。第3位は『推し、燃ゆ』となった。

 今週1位の『52ヘルツのクジラたち』は2021年本屋大賞を受賞した作品。タイトルになっている「52ヘルツのクジラ」とは他のクジラには聞こえない周波数の声で鳴く「世界一孤独なクジラ」のこと。物語も孤独な女性と口がきけない少年が出会うことで始まる。二人が追い込まれた理由や複雑な過去が紐解かれつつ、新しい人生を切り拓いていく感動物語となっている。

 著者の町田そのこさんはデビュー作『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(新潮社)に含まれた短編「カメルーンの青い魚」が第15回「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。第2作目となる『ぎょらん』(新潮社)でもその巧みな構成と話題となっていた。今作も書評家の石井千湖さんは主人公の過去が明かされる経緯を記しながら、《すべての謎が解けたとき、あまりにも悲痛な愛の形が浮き彫りになる。》と今作でも発揮された構成力と情緒の開放を称賛。そのうえで《愛を注ぎ、注がれる関係は、まずお互いの話を聴くことからはじまると教えてくれる一冊だ。》と評している。
■【石井千湖さんによる書評全文】町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』
https://www.bookbang.jp/review/article/627036

1位『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ[著](中央公論新社)

自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれていた少年。孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会い、新たな魂の物語が生まれる――。(中央公論新社ウェブサイトより)

2位『白鳥とコウモリ』東野圭吾[著](幻冬舎)

遺体で発見された善良な弁護士。 一人の男が殺害を自供し事件は解決ーーのはずだった。 「すべて、私がやりました。すべての事件の犯人は私です」 『白夜行』『手紙』……新たなる最高傑作 東野圭吾版『罪と罰』(幻冬舎ウェブサイトより)

3位『推し、燃ゆ』宇佐見りん[著](河出書房新社)

逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を”解釈”することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し――。デビュー作『かか』が第33回三島賞受賞。21歳、圧巻の第二作。(河出書房新社ウェブサイトより)

4位『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません 第五部 女神の化身(5)』香月美夜[著]椎名 優[イラスト](TOブックス)

5位『転生したらスライムだった件(18)』伏瀬[著]みっつばー[イラスト](マイクロマガジン社)

6位『新 謎解きはディナーのあとで』東川篤哉[著](小学館)

7位『ひとりをたのしむ 大人の流儀(10)』伊集院静[著](講談社)

8位『デスマーチからはじまる異世界狂想曲(22)』愛七ひろ[著]shri[イラスト](KADOKAWA)

9位『魂手形 三島屋変調百物語七之続』宮部みゆき[著](KADOKAWA)

10位『クララとお日さま』カズオ・イシグロ[著]土屋政雄[訳](早川書房)

〈文芸書ランキング 4月20日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2021年4月24日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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