【産経の本】『頭山満伝 玄洋社がめざした新しい日本』井川聡著

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■近代史から消された男の実像

政治結社「玄洋社」を率いた頭山満(とうやま・みつる)という人物ほど、戦前と戦後で世間の評価が全く逆転してしまった例は珍しいかもしれない。

戦前、雑誌の人気投票で日本一の豪傑に選出され、無位無官ながら閣僚はじめ政財界や軍の要人と直に面談できた人物が、戦後、日本の近代史から消されてしまうのである。

連合国軍総司令部(GHQ)は戦後、玄洋社に「侵略戦争に加担した超国家主義団体」とのレッテルを貼り、終戦前年に世を去った頭山はその総帥として歴史の闇に葬られた。頭山らが、「中国革命の父」とされる孫文や「インド独立の志士」であるラス・ビハリ・ボースらを支援し、日中和平に最後まで尽力してインドの独立運動を支えた「不都合な真実」は封印され、頭山の名に触れることすらタブー視されたのだ。

本書は頭山の89年の生涯を描いた伝記である。彼は日記や自伝、著作は残しておらず、手がかりは戦前の語録と伝説のみ。著者は関係者の著書や証言から数々の伝説を検証し、頭山の等身大の実像を描いた。玄洋社のサムライたちの人物群像は魅力にあふれ、さながら日本近代史を描く大河ドラマの趣だ。700ページを超す大著だが、一気に読ませる。(産経NF文庫・1298円)

産経新聞
2022年1月29日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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