【産経の本】『本音の自衛隊』桜林美佐著

■何を思い、どう動くのか

野戦の訓練、災害派遣、国際協力…。自衛隊員はさまざまな過酷な任務に立ち向かわなければならない。そのとき、彼らは何を思い、どう行動したのか。本書は、日々努力を重ねる自衛官たちの真情をつづったノンフィクションである。

自衛隊はこれまで国連平和維持活動（ＰＫＯ）としてカンボジア、モザンビークなどへ派遣されてきた。海外派遣の端緒となったペルシャ湾への掃海部隊派遣（平成３年）では出港の際、反対派が「二度と帰ってくるな」と叫んでいた。「私たちは間違っていないんですよね？」と尋ねる隊員に対し、指揮官は「触雷したら俺だって死ぬかもしれないだろう！」と明るく切り返して平常心を装ったという。丹念な取材に基づいた描写は迫力に満ちている。

自衛隊は与えられた条件下で、最大限の成果を追求する。目的達成のためには、たとえ自らの骨を削り肉を裂くことになっても、身を粉にして任務を遂行しようとするだろう。自衛隊に長年寄り添ってきた著者はそう強調する。

自衛隊はいまや国際的に評価されるようになった。屈強な精鋭たちの意外な素顔、国民の知らない自衛官の「当たり前」が胸に迫ってくる。（産経ＮＦ文庫・８９１円）