「真に撃つべき敵は……」戦争が持つ欺瞞・不条理を読者につきつける 今読みたい一冊『同志少女よ、敵を撃て』[文芸書ベストセラー]

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 3月8日トーハンの週刊ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『塞王の楯』が獲得した。
 第2位は『同志少女よ、敵を撃て』。第3位は『黒牢城』となった。

 1位と3位はどちらも第166回直木賞の受賞作。2位に食い込んだ『同志少女よ、敵を撃て』も同賞にノミネートされていた。第二次大戦の独ソ戦を舞台にした作品で、女性のみで構成されたソ連軍のスナイパー部隊の一員となった少女の成長と過酷な日々を描く。戦争の無慈悲さや戦時における女性差別についても描かれており、ロシアによるウクライナ侵攻がはじまった今、あらためて読むべき作品として注目を浴びている。

 文芸評論家の末國善己さんは《最前線でドイツ兵を殺し続けたセラフィマ(※主人公 編集部注)が、真に撃つべき敵がドイツ軍の狙撃兵でも、イリーナ(※敵役 編集部注)でもないことに気付く終盤は、いつの時代も戦争になると必ず起こる民衆の抑圧や、戦争そのものが持つ欺瞞、不条理を読者に突き付けており、強く印象に残った。》と述べ《将来が期待できる新人》と評している。また『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ[著]三浦みどり[訳](岩波書店)と併せて読むことで理解が深まると勧めている。

1位『塞王の楯』今村翔吾[著](集英社)

どんな攻めをも、はね返す石垣。どんな守りをも、打ち破る鉄砲。「最強の楯」と「至高の矛」の対決を描く、究極の戦国小説!(集英社ウェブサイトより)

2位『同志少女よ、敵を撃て』逢坂冬馬[著](早川書房)

第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。独ソ戦、女性だけの狙撃小隊がたどる生と死。独ソ戦が激化する1942年、モスクワ近郊の農村に暮らす少女セラフィマの日常は、突如として奪われた。急襲したドイツ軍によって、母親のエカチェリーナほか村人たちが惨殺されたのだ。自らも射殺される寸前、セラフィマは赤軍の女性兵士イリーナに救われる。「戦いたいか、死にたいか」――そう問われた彼女は、イリーナが教官を務める訓練学校で一流の狙撃兵になることを決意する。母を撃ったドイツ人狙撃手と、母の遺体を焼き払ったイリーナに復讐するために……。同じ境遇で家族を喪い、戦うことを選んだ女性狙撃兵たちとともに訓練を重ねたセラフィマは、やがて独ソ戦の決定的な転換点となるスターリングラードの前線へと向かう。おびただしい死の果てに、彼女が目にした“真の敵”とは?(早川書房ウェブサイトより)

3位『黒牢城』米澤穂信[著](KADOKAWA)

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の集大成。『満願』『王とサーカス』の著者が辿り着いた、ミステリの精髄と歴史小説の王道。(KADOKAWAウェブサイトより)

4位『奇跡』林真理子[著](講談社)

5位『はじめての』島本理生[著]辻村深月[著]宮部みゆき[著]森絵都[著](水鈴社)

6位『ひとりをたのしむ 大人の流儀10』伊集院静[著](講談社)

7位『アラフォー賢者の異世界生活日記 16』寿安清[著](KADOKAWA)

8位『六人の嘘つきな大学生』浅倉秋成[著](KADOKAWA)

9位『ミチクサ先生 上』伊集院静[著](講談社)

10位『母の待つ里』浅田次郎[著](新潮社)

〈文芸書ランキング 3月8日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2022年3月12日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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