琉球文学・文化研究者が沖縄の食材や料理を紹介し、食にまつわる思い出をつづった。祝いの席に欠かせない汁物「いなむどぅち」とともに、戦前に行われた兄の結婚式の様子を描写。田舎でヒージャー(山羊(やぎ))を仕入れ野外料理をした話では、地方出身者が首をはねて血を飲む場面も。
著者が酒を飲めないためか、菓子は珍しい品々が写真入りで紹介される充実ぶりだ。キビは戦地で喉を潤すために分け合い、命をつないだ。沖縄戦を戦った著者が少しだけ盛り込んだ戦争の記憶が切ない。
平成22年に沖縄製粉から刊行された本の文庫化。(ちくま学芸文庫・1100円)
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2022年11月27日 掲載
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