不適切なPTA運営で訴訟や刑事告発も 知らなかったでは済まされないNG運営とは?

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理不尽なPTAになっていませんか?

 多くのPTAでは、これから運営委員会や総会、委員会活動など、本格的にPTA活動が始動するのではないでしょうか。PTA活動の中で、意図せず問題行為に加担することのないように、知っておいた方が良いことをお伝えしたいと思います。

 じつは不適切なPTA運営をしていると、会員や保護者からPTAが訴えられたり、学校の校長先生が刑事告発されたりするケースがあることをご存知でしょうか。

 長年にわたりPTA問題を追い続けてきたノンフィクションライターの大塚玲子さんの著書『さよなら、理不尽PTA!』から引用し、PTAが行いがちな問題行為について解説します。

※本稿は『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)を一部抜粋・再編集しています。

PTA会費の無断徴収で裁判になったことも

 大塚玲子さんの著書『さよなら、理不尽PTA!』によると、これまでPTAが保護者から訴えられたケースがあります。

「2014年には、熊本である保護者が『PTAに加入していないのに会費を徴収された』として、会費の返還を求める裁判を起こしました。最終的には二審で『PTAが任意加入であることを周知する』ことを条件に和解したのですが、今後も同様の訴訟が起きる可能性はあるでしょう。
 なお、このとき被告となったPTAの会長は『PTAの冊子を原告に渡したので、入会していた』と主張しました。この理屈はさすがに、誰が聞いてもムリがあるでしょう(判決文でも、この点にはつっこみがありました)。
 自動強制加入をさせているPTAの会長さんは、もし訴えられた場合、こういう苦しい主張をせざるを得ない、ということは覚えておいてもらえたらと思います。残念ながら、他団体である学校には、助けてもらえません」
 
 PTAは学校の一部だと誤解している保護者も少なくありませんが、学校とPTAは別の団体です。ですからPTAで起こった問題はPTAで解決しなければなりません。
 では、具体的にどのような点に注意すれば良いのか、次のチェックリストであなたが所属するPTAについて確認してみましょう。

ちょっと危険な運営をしているPTAとは?

(1)入会届はありますか?
(2)保護者に無断で学校から個人情報を提供してもらったり、学校の名簿を流用していませんか?
(3)会員の合意なく会費を引き落としていませんか?
(4)PTA会費で学校の備品を購入していませんか?
(5)非会員・退会者の家庭の子どもには不利益があると伝えていませんか?

 1つでもチェックがついてしまったら、そのPTAはちょっと危険な運営をしていると考えたほうがよさそうです。
 ここでは、チェック項目の中から、(1)の入会届と(2)個人情報の提供について具体的に解説します。

▼入会届はありますか?

 すべてのPTAは入会も退会も自由の、任意加入の団体です。つまり、PTAに入会してもらうには入会の意思を表示してもらう必要があります。引っ越してきたと同時に駅前のスポーツクラブに自動加入とならないのと同じで、子どもが学校に入学したからといってPTAに自動加入にはなりません。
 大塚さんによると「いまだに多くのPTAでは子どもの入学と同時に保護者をPTAに自動加入させています。PTAに加入を義務付けるような法的根拠は一切ありませんし、PTAの他にそんなやり方をする団体も、そうそうありません」とのこと(『さよなら、理不尽PTA!』より)。PTAへの自動強制加入は、憲法21条の「結社の自由」に反するという指摘もあります。
 ですから、保護者がPTAに加入する際には入会の手続きが必要です。「すべての保護者に会員となっていただきます」といった一方的な通知では手続きは成立しないと考えましょう。入会届などを用いて、明確に意思表示をしてもらうことが肝要です。
 なお、最近ではPTAに加入しない人に「非加入届」の提出を求めるケースを聞くようになりました。一見、入会の意思確認のようにも見えます。しかし、ふつう、自分が入らない団体に未加入の申し出をすることは、まずありません。やはり入会者に入会届を提出してもらうのが、団体として「ふつう」の姿でしょう。

▼保護者に無断で学校から個人情報を提供してもらっていませんか?

 PTAが他の団体ではありえない「自動加入」を成立させているのには、じつは学校が大きく関係しています。大塚玲子さんは「そもそも、なぜPTAでは“入会申込みを受けずに会員をゲットする”というアクロバティックなことをできるのか? というと、学校がもつ保護者や教職員の個人情報(名簿)を、PTAのために無断流用、あるいは無断でPTAに提供しているからです」と著書の中で指摘しています。
 これまで学校名簿を当たり前のように使用していたPTAも少なくないと思いますが、じつはこれは大いに問題だったのです。
PTAは個人情報保護法の対象事業者なので、保護者に無断で子どもや保護者の個人情報を学校からもらったり、学校の名簿をPTA活動で使用したりすることは個人情報保護法に照らして不適切な行為になります。中には、入学前に学校から新入生の個人情報を入手して登校班を編成しているPTAもあります。もし事前に保護者の同意を得ていないのであれば、これもやはり問題があります。
 2023年春から、学校も個人情報保護法の対象となりました(それ以前は個人情報保護条例の対象でした)。
 過去には校長先生が書類送検された例もあります。
 

 なお、学校からPTAに個人情報を提供してもらうことについて保護者の同意を得る場合は、一方的に「個人情報を学校から提供してもらうのでご了承ください」などと伝えるだけでは不十分です。保護者1人ひとりに署名を求めるなど、漏れのないように注意が必要です。
 もし所属するPTAや学校が不適切な個人情報の取り扱いをしているなら、速やかに対処が必要です。入会届を用いて個人情報を提出してもらい、PTA活動に使用するように、体制を是正しましょう。もし入学前にPTAが登校班を編成する場合には、登校班のための個人情報提出とPTA入会届は別途用意するなど検討を。

 冒頭にあげた残り3つのチェック項目についても、PTAが訴えられたり学校に迷惑がかかったりする危険がはらんでいる問題です。
 PTA会費の自動引き落としは「PTAの負担軽減」という文脈で、またPTA会費での学校備品購入も「学校への貢献」としてポジティブに語られがちですが、これは大きな誤りです。法に照らして適切な処理をしていればもちろん問題ありません。しかし「これまで大丈夫だったから」という認識で踏襲されている場合は要注意です。
 「PTAや学校ではよく、一般的にやってはいけないことでも“子どものためだからよい”と正当化されますが、そんなことはないはずです。子どものためだろうが、大人のためだろうが、やってはいけないことは、やってはいけないでしょう。
 学校という場で活動するなら、子どもたちに見せて恥ずかしくない運営をしたいものです」と大塚さんは警鐘を鳴らします(『さよなら、理不尽PTA!』より)。
 PTA役員さんには、PTAのためにも、学校のためにも、そして自らの身を守るためにも、PTAが行いがちな問題行為を見直すことをおすすめします。役員以外の会員や保護者も、自分の所属するPTAが不適切な運営をしていないか、ぜひチェックしてみてください。

大塚玲子
大塚玲子 ノンフィクションライター、編集者。PTAなどの保護者組織や、多様な形の家族について取材、執筆。著書は『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)、『ルポ 定形外家族』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』(晶文社)、『ブラック校則』(東洋館出版社)など。東洋経済オンラインで「おとなたちには、わからない。」、「月刊 教職研修」で「学校と保護者のこれからを探す旅」を連載。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。

文:辰巳出版

辰巳出版
2023年4月27日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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