「弊社に来てください」という会社とは仕事が成約しない説  依頼の仕方でわかる要注意な取引先

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仕事の依頼の仕方でわかる会社の危険度とは?(写真はイメージ/写真AC)

 働き方が多様化し、フリーランスとして独立または副業を始める人も少なくない中、2023年5月12日に特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、いわゆる「フリーランス新法」が公布されました。

 これは個人で働くフリーランスに業務委託を行う発注事業者に対し、業務委託をした際の取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備等が義務付けられるというもの。

 このようにフリーランスを守る法整備が進んでいるとはいえ、法を持ち出さすことなく気持ちよく仕事をするにはどうしたらいいのでしょうか?

 東京国税局を退職し、吉本興業所属の芸人となったさんきゅう倉田さんは、依頼の仕方で要注意な取引先がわかるといいます。

 書籍『元国税芸人が教える! フリーランスで生きていくために絶対知っておきたいお金と税金の話』(あさ出版)を出版している倉田さんは、マネーリテラシーに長けた人物ですが、フリーランスで生きていくための処世術も独自の意見を持っています。

 国家公務員を辞めて芸人として活動する中で培った経験から見出した生き残るヒントとは?

「弊社に来てください」は要注意

 子どもから大人まで誰でも知っている有名な会社から、講演依頼を受けたときのことです。

「初回の打ち合わせは、弊社に来てほしい」と担当者に言われたので、これを丁重にお断りし、こちらのオフィスに来ていただくことにしました。

 仕事をくれることには感謝しているし、可能な限り、先方の要望に応えたい。しかし、「来てください」だけは、承諾しないことにしています。

 理由は、呼ばれてうかがって、仕事が成約になったことがないからです。

 さて、今回はどうなるでしょう。

 担当のAさんは、会ってすぐ、「さんきゅうさんは、どこの事務所なんですか?」と聞いてきました。

 ぼくのことをネットで検索するとすぐに出てくる情報です。事前の下調べをほとんどしていない。

 質問に一つひとつ答えてもかまいません。ただ、調べておいたほうが、お互いの時間を効率よく使えます。

 現に、ぼくも相手の会社のホームページを拝見するし、ほとんどの取引先がウィキペディアやツイッターを見てから来てくれます。

 怒ってないし、不快でもない。しかし、「移動中の電車の中でちょっと見てもいいんじゃないかな」とは思います。

 フリーランスのみなさんの場合は、相手の会社について調べると良いと思います。何も知らずに失礼な質問をして仕事を失う可能性もあるし、与信調査も必要です。

 一通り自己紹介を終えると、Aさんは言いました。

「動画を撮らせてほしい」

 上司に見せるために、講演をしているところを撮らせてほしいと言うのです。

 買う前に商品について知りたいと思うのは当然の欲求です。

 だから気持ちはわかるのですが、相手がどんな話をしてほしいかわからない状況、つまり、ニーズがわからない状況で、講演をするというのはちょっと難しい。悪い結果を招く気がします。「そもそも、YouTubeを見てもらえればいいんじゃないかな」とも思います。

ぼく 「すみません、この場でやるのはちょっと」

A 「え、ちょっとだけでいいんで」

ぼく 「すみません」

A 「じゃあ、どんな感じで話すんですか」

ぼく 「うーん、ふつうの人よりは、短く上手に話すと思います」

A 「はははは、上手って!」

 よくわからない笑いを生んでしまいました。

 そのあと、具体的な講演内容やスケジュールの話をして、面談を終えます。

 1時間後、プロフィールと写真を送るように言われていたので、メールで送ると、返事はありません。面談の結果、仕事の依頼をしないこともあるでしょう。ただ、要求されたプロフィールの送付に対し、返信はしてほしかった。

 悲しい気持ちと「やはり」の気持ちが、ぼくの中で渦を巻いています。

「来てください」と言ってきた人と仕事がうまくいったことはありません。

 ちょっと顔を見てやろうくらいの冷やかしの可能性が高いと思っています。本当に仕事を依頼したかったら、向こうから来てくれます。

 あなたが仕事を得たいと思って、どこかに営業の電話をするときに、「御社と取引したいんです。一度、うちに来てください」とは言わないはずです。

 だから、「来てください」と言われたら、警戒しながら対応しています。

その他危険度がわかる取引先の言葉

 他にも危険な言葉はあります。

●「その商品ください」

 サンプル以外の製品を要求された場合は、言い方にもよりますが、警戒が必要です。

 ぼくは、打ち合わせに使うために持っていった自分の本を求められ、アマゾンで買い直しました。

 今思えば、「新品をアマゾンで買ってお送りしますよ」と言えば良かった。

 そうすれば、取引先は「じゃあ、自分で買います」と言ったかもしれない。

「取引する前に、うちの商品を買ってください」

 お金を得るために、お金を払うなんて不合理です。

「還付金があるので、ATMでお金を振り込んでください」と同じやり方です。

 なお、下請法で親事業者が購入を強制することは禁止されています。

●「あなたのためです」

担当者 「AとBの報酬制度を用意しました。Aは成功報酬のみ、Bは月額の報酬と成功報酬。好きなほうを選んでください」

 当然、Bにします。

 赤の他人のビジネスを手伝って、報酬がないなど考えられません。

 ぼくは一攫千金を狙ってフリーランスになったわけではない。

 より良く生きるためにフリーランスになりました。

さんきゅう 「Bでお願いします」

担当者 「Aのほうがあなたのためですよ」

 おそらく、利益が出るまでぼくに報酬を払いたくないのだと思います。

 正直に言ってくれたら、ぼくも考えます。

 しかし、「あなたのためです」なんて、ひどい。

 その一言で信用できなくなってしまいました

ツイッターでの依頼は要注意


TwitterのDMでの依頼は警戒している(写真はイメージ/写真AC)

 これはフリーランスあるあるかもしれませんが、ツイッターで仕事を依頼してくる取引先も要注意です。

 ぼくへの仕事の依頼は、吉本興業さんかぼくの公式ホームページに届きます。

 稀に、ツイッターのダイレクトメッセージ(以下、DM)で依頼がありますが、成約に至ったことがありません。およそ50件中0件。

 DMでの依頼は少し警戒しています。

 一般的な会社の社員なら公式ホームページから依頼をしてくださいます。

 ツイッターのプロフィールにもウィキペディアにもURLが載っているので、辿り着くのは容易です。

 そうであるにもかかわらず、ツイッターで連絡してくる理由は、ラクだからだと思います。 送られてくるDMには宛名もありません。あったとしても、本文は定型文。

 たくさんの人に同じ内容を送っているとわかります。

 つまり、ぼくに頼みたい仕事ではなく、誰でもいいからやってくれる人を探している仕事です。

 ぼく個人に宛てた、しっかりとした依頼もあります。

 ただ、ホームページ経由の仕事と比べると、報酬が低い傾向にあります。

 それらの経験が、ぼくのDMへの警戒心を強めています。

 届いたDMをいくつか紹介します。

「はじめまして! お仕事の相談をしたく、ご連絡しました」(中小企業コンサルタント)

「一緒に仕事をしませんか」(不動産会社)

「私の有料記事を告知してもらえませんか」(ウェブマーケター)

「新しくサービスを開始しました。登録は無料です。スキマ時間を使ってオンライン講演ができます」(企業と講演者のマッチングサービス)

 DMの中に、ちゃんとした仕事の依頼があるかと問われれば、「ない」と断言できます。

 みなさんも、DMでの依頼は警戒してください。

さんきゅう倉田(さんきゅう・くらた)
芸人。ファイナンシャルプランナー。1985年神奈川県生まれ。大学卒業後、国税専門官採用試験を受けて東京国税局に入局。中小法人を対象に法人税や消費税、源泉所得税、印紙税の調査を行ったのち、同局退職。吉本興業所属芸人となる。Twitterなどで発信した税やお金の情報が話題となり、執筆や講演等の仕事を増やす。現在は税理士会、法人会、商工会、医師会、保険会社、労働組合、各種学校、中小企業などでの講演に加え、『週刊東洋経済』『東洋経済オンライン』『ダイヤモンド・オンライン』『プレジデントオンライン』『マイナビニュース』『税と経営』などでも税や経済についての記事を執筆、好評を得ている。著書に『お金持ち 貧困芸人 両方見たから正解がわかる! 元国税職員のお笑い芸人がこっそり教える 世界一やさしいお金の貯め方増やし方 たった22の黄金ルール』(東洋経済新報社)などがある。

あさ出版
2023年6月13日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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