「クマで死ぬ」「風に飛ばされて死ぬ」「スキー場で死ぬ」…アウトドアでの“意外な死”をもたらす行動とは

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アウトドアに潜む危険

 寒さが増し、いよいよ冬の到来を感じるようになってきた。これからハイキングに出掛けて紅葉を見たり、スキーなどで雪山を楽しんだりする予定を立てている方もいるだろう。

 だが、こうしたアウトドアのレジャーには思わぬ落とし穴があるという。実際に死亡事故があったアウトドアの様々な事例をまとめた一冊が、いまベストセラーになっている。タイトルはそのものズバリ『これで死ぬ』(羽根田治著、山と溪谷社)だ。

 クマに襲われて亡くなった60代女性、登山中に強風でテントごと飛ばされ命を落とした40代男性、スキー場でスノーボードをしていて転倒し雪に埋もれて亡くなった30代女性…。それぞれに死をもたらした行動とはどんなものだったのか。アウトドアに行く前に知っておきたい3つの事例を紹介しよう。

(以下は『これで死ぬ』の一部内容をもとに再構成したものです。表記はすべて刊行時のもの )

■使われていない林道に一人で入り、クマに襲われる

北海道の北見山地南部、天塩岳(てしおだけ)に近い浮島湿原に続く林道で、7月中旬、60代の女性が倒れて亡くなっているのが見つかりました。

遺体の後頭部には大きな傷が、腕や背中にも引っかき傷があり、近くには動物の糞も残されていました。これらの痕跡や専門家による現地調査の結果などから、女性は車を停めた場所からひとりで浮島湿原へ向かおうとして、ヒグマに襲われたものとみられています。

現場周辺は、地元ではよく知られたヒグマの出没エリアで、浮島湿原へは反対側のルートからアクセスするのが一般的となっています。女性がたどろうとしたルートはほとんど使われていませんでしたが、入ろうと思えば入れる状態だったとのことです。

――死なないためには?

もともとクマは臆病な動物だが、クマと人間が至近距離で突然出会ってしまうと、我が身を守るために攻撃を仕掛けてくる。目撃情報がある場所には近づかない、クマ鈴やラジオ、笛などで音を出しながら行動する、新しそうな足跡や糞があったらすぐに下山するなど、とにかく遭遇しないようにすることだ。

それでも遭遇してしまった場合、 ある程度、離れた距離でクマと遭遇したときは、ゆっくりあとずさりしてその場を離れる。大声を上げたり、慌てて背中を見せて逃げ出したりしてはならない。至近距離で遭遇し、クマが突進してきた場合は、クマ撃退スプレーを使って対抗する。5メートルほどまでに迫ったときに、目と鼻、口を狙って一気にスプレーを噴射させよう。スプレーがなければ、地面にうつ伏せになり、両手を首の後ろで組む防御姿勢をとって攻撃をやり過ごすしかない。

羽根田治
フリーライター、長野県山岳遭難防止アドバイザー、日本山岳会会員。 1961年、さいたま市出身、那須塩原市在住。山岳遭難や登山技術に関する記事を、山岳雑誌や書籍などで発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆を続けている。 主な著書にドキュメント遭難シリーズ、『ロープワーク・ハンドブック』『野外毒本』『パイヌカジ 小さな鳩間島の豊かな暮らし』『トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか』(共著)『人を襲うクマ 遭遇事例とその生態』『十大事故から読み解く 山岳遭難の傷痕』などがある。 近著に『山はおそろしい 必ず生きて帰る! 事故から学ぶ山岳遭難』(幻冬舎新書)、『山のリスクとどう向き合うか 山岳遭難の「今」と対処の仕方』(平凡社新書)など。 2013年より長野県の山岳遭難防止アドバイザーを務め、講演活動も行なっている。

2023年12月15日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

山と溪谷社

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1930年創業。月刊誌『山と溪谷』を中心に、国内外で山岳・自然科学・アウトドア等の分野で出版活動を展開。さらに、自然、環境、ライフスタイル、健康の分野で多くの出版物を展開しています。