YouTubeばかり見ている娘…「またくだらない動画を見て」と嫌味を言う父親が子どもをダメにする理由

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もし自分が楽しんでいるものを否定されたらどう思うだろうか(画像はイメージ)

 最近の子どもはYouTubeに限らず、TikTokやLINEで流れる動画を楽しんでいます。いまのトレンドが知れるだけはなく、私たちが子供の頃にテレビで感じたワクワクやドキドキを別の形で味わっているのです。

 ただ、そうした姿をみて、親は心配になります。こんなものを見ていていいのか? 悪影響があるんじゃないか? そう思う気持ちもわかります。

 だからといって、子どもが(悪影響がない範囲で)楽しんでいるものを否定してしまうことは親子関係に影響をもたらすだけでなく、成長の妨げにもなるのだそうです。

 本稿では10月に小児科専門医の成田奈緒子さんと公認心理師の上岡勇二さんが刊行した『その「一言」が子どもの脳をダメにする』(SBクリエイティブ)から、事例として小学6年生のミサのエピソードを交え、科学的に正しい言葉がけとその理由を紹介します。

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NG「またくだらないYouTube動画を見てるのか」
OK「どんなの見てるの? 教えて」

■事例 ミサ(小6)

〈カリスマ高校生モデルのYouTubeチャンネルにハマっているミサ。毎日その動画を見てばかりいます。家では「宿題が終わったら好きなことをしていい」という決まりになってはいますが、父親はそんなミサの様子が気に入りません。「またくだらないYouTube動画を見てるのか」と必ず嫌味を言います。
 最近、「頑張って勉強するね!」と部屋にこもる時間が増えたミサ。父親は「ようやくやる気になったか」と満足げです。しかし、ミサは部屋で勉強をせずに、YouTube動画に夢中になっているのでした。〉

■「くだらない」は大切なモノを切り捨てる言葉

 YouTube動画はもちろん、漫画、アイドルなど、その枕詞に「くだらない」をつけたがる親御さんたちがいます。「くだらない」は、子どもの大切にしているものを見下し、切り捨ててしまう残酷な言葉です。

 自分の世代の文化だけが「ハイグレード」で、子どもの文化は「ローグレード」だと格づけをしてしまう。私たちが知っている限りでは、「高学歴親」からこの言葉をよく聞くような気がします。

 しかし、本当に子どもの見ているYouTube動画を「くだらない」と言い切れるのでしょうか。たいていの親は、内容がよくわからないからこそ、「くだらない」と言っているのではないでしょうか。

「くだらない」は、「あいまい言葉」でもあります。大人が、実際は思考停止していることを隠すのに都合のいい言葉です。「ロジカルに、フルセンテンスで、YouTube動画の何がくだらないのか説明してほしい」と言われたら、明確に説明できる親はほぼいないのではないでしょうか。

 好きなモノは、大人も子どもも関係なく、心を弾ませてくれたり、癒してくれたりします。また、脳が疲れているとき、ストレスを解消してくれるものでもあります。

 好きなことを持つのは、人生を豊かにするだけでなく、人生を生き抜く上でも大切なことです。「くだらない」と言いそうになったときには、ぐっと踏みとどまって、「へえ、それってどんな人(モノ)?」と聞いてみる癖をつけましょう。

■親子で一緒にデジタルメディアに接してみる

 今の小中学生は、生まれたときからインターネットがあった「デジタルネイティブ」です。幼い頃からテレビ代わりにYouTube動画を見て、オンラインゲームで遊び、X(旧Twitter)やFacebookはもはや古いとまで思っていて、TikTokなどのメディアをやすやすと使いこなしています。また、学校では、ICT(情報通信技術)教育が急速に進んでいて、小中学生のほとんどが1人1台タブレットを持っているのが当たり前となっています。

 今やデジタルツールなしには、子どもたちの教育は成り立ちません。使い方次第では、学習効率を飛躍的に上げてくれるとても便利なものです。YouTube動画を見ている子どもが気になったら、「くだらない」と切り捨てるのではなく、「どんなの見てるの? 教えて」という言葉をかけてみましょう。

 子どもはいくつになっても、自分の好きなモノに興味を持ってくれる大人を歓迎します。大人は一緒に動画を見ることで、子どもが何に興味を持っているのかをダイレクトに知ることができます。

 もし実際に見て、本当に想像していた通りの「くだらない」ものだったとしても、そこは「一枚上手」に振る舞います。絶対に否定せず、「へえ、こんなの見てるんだ~」などという言葉をまずはかけましょう。しかし、多くの場合、見てみれば意外にも「へえ、今の子ってこんなファッション着こなすのね。かわいいね」など、知らなかったことを知るチャンスが親にも訪れます。これをきっかけとして、一緒に最近のトレンドの洋服を買いに行くことになるかもしれません。

 好きなモノを共有することで、親も子も、家庭生活は今まで以上に楽しいものになっていくでしょう。

成田奈緒子(なりた・なおこ)
小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。 1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2005年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。

上岡勇二(かみおか・ゆうじ)
臨床心理士・公認心理師。子育て科学アクシススタッフ。1999年茨城大学大学院教育学研究科を修了したのち、適応指導教室、児童相談所、病弱特別支援学校院内学級、茨城県発達障害者支援センターで、家族支援に携わる。著作に、『改訂新装版 子どもの脳を発達させるペアレンティング・トレーニング 育てにくい子ほど良く伸びる』(共著、合同出版)、『子どもが幸せになる「正しい睡眠」』(共著、産業編集センター)、『ストレスは集中力を高める」(芽ばえ社)。

「子育て科学アクシス」
2014年に、成田奈緒子と上岡勇二が中心となって立ち上げ。医療、心理、教育、福祉の専門家が集まり、「ペアレンティング・トレーニング」の理論を基にした親支援、家族支援を行っている。いわゆる発達障害、不登校、引きこもりなど、子育てに悩みや不安を抱える親たちや学びたい方々が数多く訪れている。

SBクリエイティブ
2024年1月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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