「匙を投げ続けた二十年間でした」東野圭吾が二十年考え続け結実 「加賀恭一郎シリーズ」最新作は「徹底したフェアプレイと騙しの技法がせめぎ合うミステリ」[文芸書ベストセラー]

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 12月26日トーハンの週間ベストセラーが発表され、文芸書第1位は『続 窓ぎわのトットちゃん』が獲得した。
 第2位は『人間標本』。第3位は『星を編む』となった。

 4位以下で注目は4位にランクインした『あなたが誰かを殺した』。東野圭吾さんの101作目となる最新長編小説。『新参者』『麒麟の翼』『祈りの幕が下りる時』(いずれも講談社)などドラマ化や映画化もされている加賀恭一郎シリーズの最新作。別荘地で起きた連続殺人事件を遺族たちが検証する会を開く。遺族の一人と知り合った加賀も参加し、参加者たちの証言から浮かび上がる事件の真相を追う。トリックや謎解きの妙が楽しめることから本格ミステリファンに高く評価され、今週5位にランクインした年末恒例のミステリランキング『このミステリーがすごい! 2024年版』で国内編3位に輝いている。

『このミステリーがすごい! 2024年版』では東野さんとマンガ家の青山剛昌さんの対談も掲載されており、そのなかで東野さんはタイトルから思いついた作品と明かしている。加賀恭一郎シリーズの『どちらかが彼女を殺した』『私が彼を殺した』(講談社)を発展させ考え始めたが《でもそんなシュチュエーションがないなって。匙を投げ続けた二十年間でした》と二十年に渡って考え続け苦心の末に生まれた作品であることを語っている。

 書評家の若林踏さんは同作を《徹底したフェアプレイと騙しの技法がせめぎ合うミステリ》と一言であらわし《検証会で関係者が語る証言は真実とは限らず、推理を進めるためにはまずその真偽を見極めるという迂遠な手続きを経なくてはならない。加賀はその手続きを、論理的な思考の積み重ねによって丁寧に踏んでいく。取っ散らかった情報が整然と並べられていく過程には美しさを感じるだろう。読者に堂々と手がかりを与えつつ、そこから目を逸らすための大胆な技法が用いられていることにも注目だ。先達の作家たちが培ってきた目くらましの小説技法を、更に綱渡りのような試みに挑むことで磨きをかけている》と紹介。《東野圭吾は謎解きミステリへの野心を手放さない作家だ》と実写化作品で焦点が当てられる人間ドラマとはまた違った魅力を放つ東野さんの挑戦を高く評価している。

1位『続 窓ぎわのトットちゃん』黒柳徹子[著](講談社)

国民的ベストセラー、42年ぶり、待望の続編!国内で800万部、全世界で2500万部を突破した『窓ぎわのトットちゃん』。世界中で愛されている、あのトットちゃんが帰ってくる!泣いたり、笑ったり……トットの青春記。(講談社ウェブサイトより抜粋)

2位『人間標本』湊かなえ[著](KADOKAWA)

人間も一番美しい時に標本にできればいいのにな蝶が恋しい。蝶のことだけを考えながら生きていきたい。蝶の目に映る世界を欲した私は、ある日天啓を受ける。あの美しい少年たちは蝶なのだ。その輝きは標本になっても色あせることはない。五体目の標本が完成した時には大きな達成感を得たが、再び飢餓感が膨れ上がる。今こそ最高傑作を完成させるべきだ。果たしてそれは誰の標本か。――幼い時からその成長を目に焼き付けてきた息子の姿もまた、蝶として私の目に映ったのだった。イヤミスの女王、さらなる覚醒。15周年記念書下ろし作品。(KADOKAWAウェブサイトより)

3位『星を編む』凪良ゆう[著](講談社)

花火のように煌めいて、届かぬ星を見上げて、海のように見守って、いつでもそこには愛があった。ああ、そうか。わたしたちは幸せだったのかもしれないね。『汝、星のごとく』で語りきれなかった愛の物語「春に翔ぶ」--瀬戸内の島で出会った櫂と暁海。二人を支える教師・北原が秘めた過去。彼が病院で話しかけられた教え子の菜々が抱えていた問題とは?「星を編む」--才能という名の星を輝かせるために、魂を燃やす編集者たちの物語。漫画原作者・作家となった櫂を担当した編集者二人が繋いだもの。「波を渡る」--花火のように煌めく時間を経て、愛の果てにも暁海の人生は続いていく。『汝、星のごとく』の先に描かれる、繋がる未来と新たな愛の形。(講談社ウェブサイトより)

4位『あなたが誰かを殺した』東野圭吾[著](講談社)

5位『このミステリーがすごい! 2024年版』『このミステリーがすごい!』編集部[編](宝島社)

6位『すべての恋が終わるとしても -140字の恋の話-』冬野夜空[著](スターツ出版)

7位『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』汐見夏衛[著](スターツ出版)

8位『可燃物』米澤穂信[著](文藝春秋)

9位『月が導く異世界道中19』あずみ圭[著](アルファポリス)

10位『思い出の屑籠』佐藤愛子[著](中央公論新社)

〈文芸書ランキング 12月26日トーハン調べ〉

Book Bang編集部
2023年12月30日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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