文章を書くときに、ほとんど意識していないのが接続詞です。
取引先に送るメール、SNSの投稿、資料を作成するときなど、文のつなぎとして無意識に使っている方が多いのではないでしょうか。
しかし、接続詞ほどマニアックで奥深い品詞はありません。
「だから」「なので」「そのため」など、同じ順接の接続詞でも、どれを使うかで相手が読んだときの印象は大きく変わります。
読み手からしたら、そのくらいインパクトの強い重要な品詞なのです。
接続詞には文と文、ことばとことばをつなげる役割があるため、接続詞の使い方を知ることで後ろの文を印象付けたり、伝えたいことを明確にしたりなど、豊かな文章がつくれるようになります。接続詞の使い方を正しく学んで、ワンランク上の文章が書けるようになっていきましょう。
(※以下は前田安正・著『伝わる文章がすぐ書ける 接続詞のコツ』の一部をもとに再構成したものです)
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接続詞を変えるとその後の文の風景が変わる
接続詞は、前の文とそれに続く文の関係を示す指標になります。次の「犬がいる」に、さまざまな接続詞をつけて考えていきましょう。
・犬がいる。だから、うちの犬を近づけないようにしよう。
・犬がいる。おかげで、心が癒やされる。
・犬がいる。それで、犬が苦手な僕はその路地を避けて登校している。
・犬がいる。しかし、人懐こいので番犬にはならない。
・犬がいる。とはいえ、猫も一緒に飼いたい。
・犬がいる。そして、飼い主とじゃれ合っている。
・犬がいる。そのうえ、羊もいる。
「犬がいる」という最初の文はすべて同じです。ところが、その後に続く文はそれぞれ異なっています。接続詞は「犬がいる」と、続く二文目がどういう関係にあるのかを示していることがわかると思います。
たとえば、最初に挙げた「犬がいる。だから、うちの犬を近づけないようにしよう。」という文章があったら、みなさんはその次に来る文章をどう展開するでしょうか?
接続詞は読み手の負担を軽くする効果がある
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・犬がいる。だから、うちの犬を近づけないようにしよう。
このあとに続く文として、以下の文を例にします。
・そのため、いま来た道を戻ろう。
この文から接続詞をすべて省いてみます。
犬がいる。
うちの犬を近づけないようにしよう。
いま来た道を戻ろう。
この文章を読んだときに、どのような印象を持たれたでしょうか。
接続詞がなくても文脈を追えば、言わんとすることはわかるかと思います。しかし文章の流れを自ら想像しなくてはならず、読み手にとってはかなり負担がかかる文章です。文章を読む負担がかかりすぎると、読み手はそれ以降の文章を流して読んでしまうかもしれません。結果、メールであれば返信がないという状況に陥ります。
また、書き手側からしても、相手に意図がしっかり伝わっているかどうか不安が残ってしまう文章です。
このように、書き手の不安と読み手の負担を取り除き、それぞれの文を論理的につないでいく役目が接続詞にはあるのです。
接続詞を使うことで想いも表現できる
今度はもう少し具体的に、接続詞の役割を掘り下げてみます。
・犬がいる。人懐こいので番犬にはならない。
この二つの文には、もともと直接的な関係性はありません。「人懐こい」のが、1 文目の「犬」のことを指しているかどうかが明らかではないからです。
1文目の「犬」と、2文目の「人懐こくて番犬にならない犬」は、それぞれ別の犬を指している可能性もあります。
・犬がいる。しかし、人懐こいので番犬にはならない。
「しかし」という逆接の接続詞をつけることで、1文目と2文目の「犬」が、同じであることがわかります。さらに「犬がいる」は、犬を飼っているという意味だということが認識でき、この犬が、人懐こいので番犬にならない、という文脈をつくっているのです。
「しかし」という、書き手の期待とは異なる状況を示す接続詞なので、飼い主(書き手)としては、番犬としての役割を期待していたこともわかります。
犬がいる。
⇒しかし、人懐こいので番犬にはならない。
⇒もっとも、そこがこの犬の魅力なのだが……。
このように「もっとも」で次の文につなぐと、この犬に対する飼い主の愛情も表現できます。制約の接続詞「もっとも」には、「番犬にはならない」という前の事柄を受けつつも、それに反することを付加する役目があるからです。
このように、接続詞にはさまざまな効果があります。
本書では、接続詞を50音順に掲載した辞書のような項目を多く記載しています。接続詞を正しく使い分け、相手に伝わる文章を目指してみてはいかがでしょうか。
前田安正(まえだ・やすまさ)
文章コンサルティングファーム「未來交創株式会社」代表取締役。
朝日新聞元校閲センター長、元用語幹事。早稲田大学卒業、事業構想大学院大学修了。
大学卒業後、朝日新聞入社、大阪・東京本社校閲部長、用語幹事、編集担当役員補佐兼経営企画役員補佐、朝日新聞メディアプロダクション校閲事業部長などを歴任。ことばや漢字に関するコラムやエッセイを約10年にわたり、毎週担当していた。
10万部を超すロングヒットとなっている『マジ文章書けないんだけど』(大和書房)、『きっちり!恥ずかしくない!文章が書ける』(すばる舎/朝日文庫)など、日本語や文章に関する著書多数。現在、「ことばで未来の扉を開く」をコンセプトに、大学のキャリアセミナー
や、企業・自治体などで広報コンサルティングや研修などを展開。新聞・雑誌、テレビ・ラジオなどメディアへも多く登場している。
ライティングセミナー「マジ文アカデミー」を主宰、Podcastで「ことばランド」を配信、また幼稚園・小学校受験に関するサロン「お受験は願書が8割」を開いている。
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1989年設立。ビジネス書・自己啓発本を中心にしながら、児童書・学参や健康書・シニアエッセイなど様々な世代に向けた出版をしています。海外翻訳BL書籍も積極的に出版していきます。
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