【話題の本】『新版 思考の整理学』外山滋比古著 270万部の「知のバイブル」

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「東大・京大で1番読まれた本」という宣伝文も話題となり、昭和61年に文庫化されてからの累計は270万部を超える。今や「知のバイブル」となった感があるロングセラーの増補改訂版だ。4年前に死去した著者が平成21年に東大で行った特別講義を新たに収録し、文字も大きくした。2月に初版10万部で発売され、順調に売れているという。

自分の頭で自由にものを考え、何かを創造するために必要な心掛けを説く。着想をしっかり寝かせ、ときに異質な考えと混ぜ合わせながら、抽象の次元へと導く。そんな創造の道のりを説明する中で強調されるのが「忘れること」の大切さだ。頭いっぱいに知識が詰まっていれば、考えが深まるというわけではない。むしろ不要な知識を捨てる「忘却」こそが混乱しがちな思考を整理してくれる。そして、のびやかな発想へとつながるのだと。

著者は特別講義で「自分にとって『意味のあるもの』と『意味のないもの』を区別し、意味のないものを忘れていく。ここに個性があらわれる。これはコンピューターには、できない機能である」と語る。ネット上に情報が氾濫し、人工知能(AI)が身近な存在となった今、このメッセージは重く響く。(ちくま文庫・693円)

海老沢類

産経新聞
2024年3月2日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

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