「自分で注文して作った」ユニフォーム姿で滋賀への愛を叫ぶ 本屋大賞『成瀬は天下を取りにいく』著者・宮島未奈さん(スピーチ全文公開)

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 第21回目となる「2024年本屋大賞」の受賞作品が、今日発表されました。

「面白かった」「お客様にも薦めたい」「自分の店で売りたい」を基準に、全国の530書店・736人の書店員による投票で選ばれた10作品の候補のうち、滋賀県大津市の膳所(ぜぜ)を舞台にした宮島未奈さんのデビュー作『成瀬は天下を取りにいく』(新潮社)が大賞を受賞しました。

 この作品の主人公は、大津市に住む一風変わった女子中学生の成瀬あかり。地元唯一の百貨店が閉店するまでの1ヶ月間、毎日ローカルニュースの中継に映り込むと宣言したかと思えば、幼なじみの少女・島崎を巻き込んで唐突にM-1グランプリへの挑戦を決行し、「実験のために」坊主頭となり、200歳まで生きると堂々と宣言する成瀬あかりを、周囲の人々の証言から描き出します。

 著者の宮島さんは、「自分で注文して作った」というオリジナルの青いユニフォーム姿で授賞式に登場。「滋賀の皆さん見てますか。成瀬が本屋大賞を取りました!」と喜びの声を上げました。

 滋賀への愛情が詰まった宮島さんの受賞スピーチ全文をご紹介します。

■宮島未奈さんの受賞スピーチ全文

 膳所(ぜぜ)から来ました宮島美奈です。よろしくお願いいたします。

 滋賀の皆さん見てますか。成瀬が本屋大賞を取りました!

 本屋大賞のノミネートが決まったときから、作品の舞台である滋賀県大津市は大変な盛り上がりです。JR膳所駅には、大きな成瀬と島崎のウェルカム看板が設置され、物語に登場したスポットを巡るスタンプラリーも開催されています。

 今私が着ているのは、作中で成瀬と島崎が結成するコンビ「ゼゼカラ」のユニフォームです。この単行本が出る前にですね、こうやってインタビューに答えるときとか人前に立つときに着ようと思って自分で注文して作ったんですけれども(笑)、背中にはちゃんと名前が入っています(「MIYAJIMA」と「37」の背番号)。

 最初のうちは、「何でユニフォームを着ているんだろう」というような顔で見られたこともあったんですけど、今では私が説明する前に「ゼゼカラ」のユニフォームだと気付いてくださる方も増えてきて、すごく知名度が上がっているのを感じます。

 本屋大賞をこうして受賞したことで、ますます多くの皆様に成瀬と出会っていただけるのがとても楽しみです。作中で「ゼゼカラ」はM-1グランプリに挑戦するんですけれど、私はこの本屋大賞をM-1グランプリのような賞だと思っています。M-1グランプリに優勝したコンビがずっと「M-1王者」と呼ばれるように、本屋大賞を受賞した作家も「本屋大賞作家」としてずっと呼ばれることになるので、私もこれから本屋大賞作家の看板を背負っていくと思うと、身が引き締まる思いです。

『成瀬は天下を取りにいく』の第1話「ありがとう西武大津店」は、第20回女による女のためのR-18文学賞(新潮社)の受賞作です。そのときの選考委員が、三浦しをんさんと辻村深月さんでした。当時はコロナ禍で通常通りの授賞式ができず、選考委員のお二人と新潮社の編集者の皆さんと10人くらいで、会議室の中で小さい規模で行いました。あれから3年、三浦しをんさん、辻村深月さんと同じ本屋大賞作家になれたということは、とても光栄で奇跡みたいなことだと感じでいます。

 また、そのように、コロナ禍に小説家人生がスタートした私にとっては、こうして多くの皆様にお祝いしていただけたことが、とても感無量です。とてもたくさんの人にこうしてお祝いしてもらう未来があったのだなということに、とても驚いています。成瀬も作中でですね、「先のことはわからない」ってよく言うんですけれど、当時の私も全然こんなことになるとは想像していなかったなって思います。

 これから、来年の本屋大賞の発表会までの1年間も、きっと今の私には想像できないことがたくさん起こるんじゃないかと思っています。でも、成瀬と一緒ならきっと大丈夫です。『成瀬は天下を取りにいく』を読んでくださった皆さま、投票してくださった書店員の皆さま、本当にありがとうございました。

■ノミネートされた10作品は以下(順不同)

『成瀬は天下を取りにいく』(宮島未奈、新潮社)
『黄色い家』(川上未映子、中央公論新社)
『君が手にするはずだった黄金について』(小川哲、新潮社)
『水車小屋のネネ』(津村記久子、毎日新聞出版)
『スピノザの診察室』(夏川草介、水鈴社/文藝春秋)
『存在のすべてを』(塩田武士、朝日新聞出版)
『放課後ミステリクラブ(1)金魚の泳ぐプール事件』(知念実希人、ライツ社)
『星を編む』(凪良ゆう、講談社)
『リカバリー・カバヒコ』(青山美智子、光文社)
『レーエンデ国物語』(多崎礼、講談社)

Book Bang編集部
2024年4月10日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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