『永六輔の伝言 僕が愛した「芸と反骨」』
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盟友が活写する永六輔の交友録
[レビュアー] 碓井広義(メディア文化評論家)
今年7月7日、永六輔が83歳で亡くなった。草創期からテレビに携わり、放送作家、作詞家、タレント、また作家としても活躍した異能の人だ。旅が日常で、行った先で見たこと、聞いたこと、出会った人のことを電波と活字で伝え続けた。60歳で上梓した『大往生』(岩波新書)は大ベストセラーとなる。そこには有名・無名を問わず、永の気持ちを揺り動かした、他者の言葉と人生が並んでいた。
矢崎泰久編『永六輔の伝言 僕が愛した「芸と反骨」』は、元『話の特集』編集長である矢崎が、永に“成り代わって”語る自分史であり、有名人たちとの交友録である。
たとえば昭和22年、14歳の永は、まだ焼け跡の残る浅草で、鉄くずなどを集めて生計を立てていた渥美清を知る。やがてコメディアンとなった渥美と、永が作・構成を手がけた『夢であいましょう』(NHK)で一緒に仕事をすることになる。人気者になっても、ひけらかすことのない渥美はまた、最期まで義理堅い人だった。永は生前、渥美のことを書いたことがない。それは親しさの証しだ。
他に登場するのは坂本九、三波春夫、淡谷のり子、やなせたかし、井上ひさし。「中年御三家」を組んだ小沢昭一と野坂昭如。そして作曲家の中村八大もいる。中でも貴重なのが三木鶏郎をめぐる回想だ。戦後、その社会風刺がGHQや政府から煙たがられた、伝説のラジオ番組『日曜娯楽版』(NHK)を作った男の仕事ぶりが活写されている。