インターネットは「自宅の玄関ドア」? 炎上を避けるために意識しておくべきこと

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11歳からの正しく怖がるインターネット

『11歳からの正しく怖がるインターネット』

著者
小木曽健 [著]
出版社
晶文社
ジャンル
社会科学/社会
ISBN
9784794969552
発売日
2017/02/18
価格
1,430円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

インターネットは「自宅の玄関ドア」? 炎上を避けるために意識しておくべきこと

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

私はグリーという会社で、年間三〇〇回以上、ネットの安全利用について講演しています。(中略)グリー社内には、「安心・安全チーム」という部署があり、ネットを使うすべての方々に向けて、ネットを安全に使うための情報、ネットを「普通の道具」として使うための知識をお伝えしています。(「はじめに」より)

11歳からの正しく怖がるインターネット: 大人もネットで失敗しなくなる本』(小木曽健著、晶文社)の冒頭で、著者は自身についてこのように説明しています。ちなみに講演の対象は小学5年生からシニア世代まで幅広いものの、伝えている内容はどの世代でも同じなのだとか。ネットという道具に変わりはなく、その道具で失敗したときに降りかかるリスクも同じ。だから大人であろうが子どもであろうが、知らなければならない知識も一緒だという考え方なのです。

そして本書も、ネットを安全・安心に使うための「絶対に失敗しない方法」をわかりやすく解説したもの。第1章「ネットで絶対に失敗しない方法」のなかから、「炎上」についての考え方を確認してみましょう。

ネットで絶対に失敗しない方法

ツイッターやLINEなどがきっかけとなって、「炎上」してしまうことは決して珍しくありません。そのことについて相談を受ける機会も多いという著者は、ネットで絶対に失敗しない方法についてこいう記しています。

そもそもネットの中にいる人って、どんな人たちでしょう? 答えは簡単、私たちです。現実世界で暮らしている普通の私たち、これがネットの中にいる人たちです。(41ページより)

つまり、ネット内での人間の感情、おもしろいと思う気持ちや怒る理由、ルール、マナー、文化なども現実世界と同じだということ。わざわざ「日常」と「ネット」を分けて考えるから、話がややこしくなるのだというのです。

日常でやっていいことはネットでもOK。
そして日常でやらないことはネットでもやらない。
(42ページより)

そしてこのことに関連し、著者は「インターネットというものは、実はすべて家の『外側』」なのだとも発言しています。パソコンもスマホもLINEもメールもSNSも、ネットにつながっているものはすべて家の「外側」だということ。しかも、その「外側」には特徴があるのだそうです。

何かアホなことをやらかせば、確実に炎上し身元がバレる。ネットはそんな場所です。家の『外側』で、身元が確実にバレる場所ってどこですか? 自宅玄関ドアですよ。
これがネットの正体なのです。
(43ページより)

ネットにものを書くのは、玄関ドアにベタベタものを貼っていくのと同じ作業。だから玄関に貼れるものであれば、ネットに貼ってもまったく問題ないわけです。そして玄関ドアに貼れないものは、ネットにも書けないということ。

事実、これまでに起きた数多くのネット事件、トラブル投稿で、「自宅玄関に貼れたであろうもの」はほぼなかったといいます。当然、「玄関に貼れるもの」がトラブルにつながった事例も見つからなかったそうです。いわば、自宅玄関に貼れるものがネットの限界。だから、自宅ドアを基準に判断すればOKであり、それがネットで絶対に失敗しない方法だということです。(40ページより)

玄関に貼らないモノ

ちなみに、著者が玄関に貼らないもの(=ネットに書かないもの)は、

政治の話
外交問題
宗教の話(一般論は書きます)
下ネタ(程度による)
(47ページより)

なのだとか。ただし、これは著者の基準であり、社会的な立場や職業、主義によっても変わってくるはず。大人の場合、玄関に貼れる具体的な内容は人それぞれ微妙に違って当然だということです。

とはいっても、それが「玄関ドア」であることは同じ。立場や主義が違っても、ネットの正体は「玄関ドア」という表現で共有できるということ。たとえば初対面の相手と会話する懇親会や立食パーティーなどでは、上記のような話題を無意識のうちに避けているはず。「ネット=現実」だと考えれば、そのくらいがちょうどいいというわけです。(45ページより)

それでも炎上させてしまったら

では、もしも自分の身近でネット炎上が起きてしまったら、いったいどうすればいいのでしょうか? この問いに対して著者は、「なかったことにはできない」と答えています。「交通事故を起こしてしまった! どうすればなかったことにできますか?」とまったく同じ質問だというのです。

もし私たちがクルマで人身事故を起こしてしまったら、負傷者の救護や救急車の手配、警察への連絡など、その場で迅速にやるべきことはたくさんあります。「なかったこと」にしたとしたら、それはひき逃げになってしまいます。インターネットの炎上も、同じように「なかった」ことにはできないということです。

自分の投稿が炎上してしまったら、「すぐに消さなきゃ」と慌てているころには、多くの人たちがその投稿に気づいているもの。「スクリーンショット(スクショ)」などで画面コピーされることもあるでしょう。そんななか、投稿を削除して逃げ出したり、アカウントを消して「なかった」ことにしようとすれば、ほぼ間違いなく自体は悪化するといいます。交通事故で現場から逃げ出したり、クルマを処分したりするのと同じことだというわけです。

つまりほとんどの炎上では、本人が投稿を削除することで自爆スイッチを押しまくっているということ。炎上がスタートするタイミングが、自分の投稿で騒ぎがはじまったときではなく、本人の投稿削除をきっかけに、スクショ画像が爆発的に拡散しはじめたときだというのです。(49ページより)

では、どうすればいい?

だからこそ、「炎上投稿は消さない」ことが基本だと著者はいいます。オリジナルの投稿が残っていれば、コピーに価値はなくなります。価値のない情報は拡散しないので、とりあえず最悪の事態は回避できるのだといいます。そして、重要なのはここから。炎上の原因となった投稿に「続き」の内容、新しい動きを加えることが大切だというのです。

まず、自分の愚行を素直に詫び、誤解されている部分があれば訂正や補足をします。迷惑をかけた相手がいれば、その相手にどんなお詫びをしたのか、また自分にペナルティが与えられたのであれば、それも可能な範囲で伝えてください。
だって一〇〇万人は、「お詫び」と「ペナルティ」を求めて集まってきているんですよ。だったら最初に、その欲しがっているモノをちゃんと見てもらって、まずは落ち着いてもらわないと始まらないのです。(52ページより)

訂正や補足をする際には、言い訳や反論をしないことが大切だとか。よほど筋の通った説明でない限り、火に油を注ぐことになるというわけです。そして決め手は、自分を非難した人に対するお礼、感謝。「指摘してもらったおかげで自分の間違いに気づくことができた、ありがとう」と感謝の気持ちを表すということです。

しっかりと反省の気持ちを伝え、批判に対しても感謝の気持ちを示すことができれば、その姿勢や発言も拡散していくもの。「炎上させてしまったアホなやつ」ではなく、「炎上させてしまったけれども、その後しっかりと対処できた、ネットリテラシーの高いヤツ」という情報が広がっていくといいます。(51ページより)

話しかけるようにソフトな口調で書かれているため、「インターネットを使ううえで意識しておくべきこと」を楽な気持ちで学べるはず。炎上を避けるためにも、読んでみてはいかがでしょうか?

(印南敦史)

メディアジーン lifehacker
2017年3月21日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

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