『シベリア出兵』
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七年に及ぶシベリア出兵を細大漏らさず描く
[レビュアー] 図書新聞
ロシア革命の翌年、反革命軍のチェコ軍団救出を目的に、日本はウラジオストクへ出兵。一九二五年にサハリン島の北部から撤退するまでの七年間をシベリア出兵と定義し、その全体像を細大漏らさず描く。戦争には掲げられた大義の裏側に、必ず真逆の本音がある。シベリア出兵に関して、その正当性に疑念を抱くマスコミもあった。しかし軍部からの資金流入により骨抜きにされる。本書によれば、「宣伝活動を業務とする陸軍の常設の組織は、ここから始まる」と述べている。「人が死ねば死ぬほど、兵は退けなくなります。リーダーは、決して死者を見捨てることが許されないからです」というジョン・ダワーの言葉は重い。死者を戦争の道具にすることは、冒瀆以外の何物でもない。(9・25刊、二六六頁・本体八六〇円・中公新書)