『マル暴捜査』
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「警察モノ」熱は新書にまで及んだ
[レビュアー] 林操(コラムニスト)
原田宏二の『警察捜査の正体』(講談社現代)、久保正行の『警視庁捜査一課長の「人を見抜く」極意』(光文社)に『捜査一課のメモ術』(マイナビ)、古野まほろの『残念な警察官』(光文社)に『警察手帳』(新潮)……この3、4年に出た分だけでもあれこれ思い当たるのが警察モノ新書。
人気の理由はさて、と首を傾げて頭に浮かんだ新書は磯田道史の『武士の家計簿』(新潮)とか田中優子の『江戸を歩く』(集英社)とか。時代小説のブームに続いて時代モノ新書の山が生まれたのなら、警察モノ新書の波も警察小説ブームの産物ではないかと。江戸期にせよ警察にせよ、ホントのところはよくわからない世界の物語に入れ込むと、そのホントのところまで知りたくなるからね。
で、『マル暴捜査』の今井良は警察報道に携わってきたTVの人。冒頭に挙げた警察モノ新書5冊と違って著者が警察OBではないせいか、警察の告発や礼賛に傾かないバランスのよさで、警官嫌いにも警官好きにも引っかかりが少ないのでは?
新著のテーマは暴力団その他の組織犯罪を扱う警視庁の組対(ソタイ)こと組織犯罪対策部。マル暴担当のデカがヤクザに似てくる理由から科学捜査に違法捜査、刑事vs.公安、組対の組織解剖まで、これまたホントのところだらけで、警察小説の読者どころか作者にも愛されそう。
3年前の『警視庁科学捜査最前線』(新潮)も、警察小説のみならず刑事ドラマを楽しむのに役立つ新書だった。