『一流になる勉強法』
- 著者
- 西田一見 [著]/「元気が出る本」出版部 [編]
- 出版社
- 現代書林
- ISBN
- 9784774516806
- 発売日
- 2018/01/12
- 価格
- 1,540円(税込)
大切なのは、脳にだまされる前に「だまし返す」こと。ビジネスにも役立つ「脳だま勉強法」とは?
[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)
『一流になる勉強法 脳の使い方を変える「脳だま勉強法」』(西田一見著、現代書林)の著者は、メンタルトレーナー兼目標達成ナビゲーター。大脳生理学と心理学に基づくメンタルトレーニング研究や、脳の機能にアプローチする潜在能力開発プログラム「SBT(スーパーブレイントレーニング)理論」に基づき、これまでにビジネス、スポーツ、受験など、あらゆる分野で指導を重ねてきたのだそうです。
なんだか難しそうですが、脳の構造を理解し、正しい方法で実践すれば、誰でも簡単に変わることができるのだとか。大人から子どもまでに応用できる、究極の成功ノウハウだというのです。
ちなみに本書のベースになっているのは、著者が2012年に出版した『脳だま勉強法』という書籍。どうやら、この「脳だま勉強法」こそが大きなポイントのようです。果たして、どのようなものなのでしょうか?
「脳だま勉強法」の根本を簡単にいうと、「脳をだまし返す」ということです。(中略)ただ「アホ」になってくれればいいのです。アホに抵抗があるなら、スピーディといい換えてもいいかもしれません。要するに「いらぬことを考えるな」ということです。(16ページより)
そもそも人間は、頭がよすぎるのだと著者はいいます。頭がいいから、動く前にあれこれ悪いことを想像し、脳にだまされてしまう。だとすれば、「自分で自信を失う手段を選択してしまう」とも表現できるのかもしれません。
「自信がない」という状態も、自分自身がつくり出しているエネルギーです。すごい力を持っているのに、その力をマイナスの方向に使っているともいえるでしょう。そこで、そんな状態を「いい方向」へとひっくり返してやる。それが「脳だま勉強法」のコンセプト。
そのような考え方に基づく本書のなかから、きょうは第7章「脳をあきらめさせない 大きな壁や逆境をぶち破る方法」に焦点を当ててみたいと思います。
失敗したとしても上を狙うチャンスと考える
「脳だま勉強法」で前向きに楽しく勉強し、目指す試験を受けたとしても、現実的には落ちてしまうことだってあり得ます。事実、著者の教え子のなかにも、第一志望に落ちてしまう子は存在するといいます。
そして第一志望に落ちた場合、多くの人は「受かった第二志望に入るか、あと一年がんばって、もう一度、第一志望に挑戦するか」と考えることでしょう。しかしそんなとき、著者はまったく違うアドバイスをするのだそうです。
「時間の余裕が一年できたということは、もっと上が目指せるということだね。これまでの第一志望は第二志望にしてもいいんじゃない?」(206ページより)
試験に落ちたのは、「受かるだけの準備ができていなかった」だけの話。いわば、能力が足りないということではないということ。たとえば2キロ先に合格地点があったところを、1600メートルしか歩けなかったというようなもの。だからこそ来年に再受験するのであれば、2キロ先はむしろ楽勝。いっそ3キロ先を目指してもいいという前向きな考え方です。(204ページより)
どんな結果になっても出力はプラスにする
試験に落ちると、あたかも自分を否定されたかのように落ち込んでしまう人がいますが、著者にいわせればそれはまったくナンセンス。なぜなら、「落ちた」のは距離が足りずに“こちらから”タッチできなかっただけだから。“相手から”NOを突きつけられたわけではないというのです。
合格も不合格も、あなたが選んだこと。あくまで主導権は自分にあります。
だからこそ、何度でもチャレンジしていいのです。(207ページより)
特に就職試験の場合、「選ばれた」とか「落とされた」など、どうしても受け身で結果を判断しがち。しかしそれは相性の問題でもあり、つまりは「縁がなかった」だけのこと。縁がないとしたら、早くそのことに気づいたほうがいいわけです。
「落ちた」はマイナス事象なので、そこだけにフォーカスしていたら「マイナスの出力」ばかりが続いてしまって当然。しかし「縁のないところがひとつ整理、削除された」と考えれば、それは「プラスの出力」になるということです。(207ページより)
ぶつかる壁も自分が生み出したもの
「人生は、ただ上のレベルばかりを目指せばいいというものではない」と著者。いくらやっても壁にぶつかってしまう人は、そもそも目指す場所を間違えている可能性があるというのです。そのため、どうしても勉強がうまく進まなかったり、何度受けても試験に落ちてしまったりするのであれば、いま一度、自分の将来イメージを確認してみるべきだといいます。
たとえば、「子どものころから自動車が大好きで、自動車づくりに関わる仕事がしたい」という夢を持っている人は、大手自動車メーカーに就職しなければいけないと考えてしまいがち。しかし現実的に、巨大な自動車メーカーに就職することは簡単ではありません。
しかも巨大自動車メーカーで実際に“自動車づくり”に携わっている人は少数で、他の大多数は営業や管理部門などの仕事をしているはず。それよりも、世界一軽い鋼鉄繊維を開発したり、世界一安全なホイールをつくったりする町工場にこそ、その人の生きがいがあることも考えられます。
ほんとうの自分の欲求ではなく、「世間的によさそうだから」という判断基準で選んでいると、どうしても壁にぶつかってしまうのです。(211ページより)
山はエベレストだけではなく、富士山も高尾山も同じく山。選ぶ山は人によって違っていい。目指すべきものをしっかりイメージすることが大切だというわけです。(209ページより)
本書には、試験の話題が多く登場します。なにしろ、「勉強法」と銘打っているのですから当然の話。しかし注目すべきは、帯に書かれている「この本は、どんな勉強にも必ず役立ちます」という一文です。
受験勉強でも資格試験でも、あらゆる勉強に対応しているということ。ビジネスパーソンが記憶にとどめておくべき「勉強のポイント」が、数多く紹介されているわけです。それらを身につければ、脳を柔軟に使いこなすことができるようになるかもしれません。
Photo: 印南敦史