『よく宗教勧誘に来る人の家に生まれた子の話』
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宗教的な「正しさ」の強要と「信仰」による虐待を防ぐために
[レビュアー] キリスト新聞社
熱心なキリスト者の家庭に生まれ、親に従って熱心に伝道活動、奉仕、聖書の勉強に向かう……。しかし本心は「楽しくないのに、喜んでいるように見せなければいけない」。そんな声が、教会の中にもあるかもしれない。
「ものみの塔聖書冊子協会」(エホバの証人)の二世信者として生まれた作者が、自らの経験を基に描いた漫画。描かれているのは熱心な信徒の母と、本心を隠しながら母の教えに従い続ける主人公の脱会までの日常だ。
「エホバの証人の話であって、『正統な』キリスト教会とは関係ない」とも言い切れないのが本作の特徴。作中に描かれる熱心な布教活動や勉強会、宗教関連行事への不参加、お焼香、国歌斉唱、信者以外との交際、婚前交渉などの忌避、禁止など、主人公が受けてきた教え(教育)は、教会にとっても決して珍しいものではない。作者は教えに縛られていた当時のことを、「他の子どもと同じになれない。本当はしたくないのに、したいと思わなくてはいけない」と振り返る。
信仰継承は教会でも常に課題だ。健全な親子関係の下で伝えていくことが一番だが、宗教であるが故に犯してしまう、宗教的な「正しさ」の強要や「信仰」による無意識下の虐待が、わたしたちの間にも起こり得ることを覚えていたい。