設定よし、人物よし、着地よし。 築山桂の面目躍如の快作!/築山桂『近松よろず始末処』

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近松よろず始末処

『近松よろず始末処』

著者
築山 桂 [著]
出版社
ポプラ社
ジャンル
文学/日本文学、小説・物語
ISBN
9784591156940
発売日
2018/04/06
価格
1,728円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

設定よし、人物よし、着地よし。 築山桂の面目躍如の快作!

[レビュアー] 青木逸美(ライター)

 時は元禄、犬公方こと五代将軍綱吉の治世。上方文化が花ひらき活気あふれる大坂に、町の厄介事を始末する“裏家業”があった。知る人ぞ知る、その名は「近松万(よろず)始末処」。
 お役人に頼っても埒があかない様々な事件を、よろず引き受け始末をつける――。その設定だけでも、ぐっとくるのに、登場人物の造形が絶妙だ。
 花売りが表家業の虎彦は十九歳、元・賭場の用心棒。喧嘩三昧の過去を捨て、始末処の探索方となった。相棒の鬼王丸は、山吹色の毛並みで、ぴんと立った耳とくるりと巻き上がった尻尾を持つ、もっふもふの(たぶん)柴犬だ。小さくてあいらしいが、閃きと探索能力は天下一。虎彦を兄弟分と慕って、いつも寄り添っている。もう一人の相棒は、「少将」と名乗る不思議な浪人。年の頃は二十五、六。匂い立つような色男で、愛想はいいが胡散臭い。虎彦とは、どうにも相性がよろしくない。凸凹な二人組と忠犬一匹を束ねるのは、上方文化の立役者、浄瑠璃作家の近松門左衛門だ。
 元禄時代を象徴する「お犬さま騒動」、赤穂浪士に繋がる仇討ちの顛末、井原西鶴の幽霊退治など、様々な事件に始末処の面々が東奔西走。史実と物語が絡んで縺れて溶け合っていく。天秤棒を得物に暴れまくる虎彦の活躍に胸躍らせ、健気な鬼王丸に癒やされ、謎めいた少将に惑わされ、食えない爺や近松に振り回される。すっかり作者の掌で転がされ、気がつけば大団円、訪れるカタルシス。散々な目に遭った虎彦といっしょに、道頓堀の真ん中で叫びたい気分だ。「――よろずのこと、始末いたし候」。

ポプラ社
2018年4月11日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

ポプラ社

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