『本懐』
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責任の所在
[レビュアー] 上田秀人(作家)
国会が空転している。いつものことだと言えば、そうなのだろうが、またもや利権がらみの話である。
上から指示があったのか、下が勝手に忖度(そんたく)したのか、金あるいは特区ビジネスという利権に政治家、官僚、一般人がかかわったとして、世間を騒がせている。
いろいろと証拠や証言が出てきているのでそろそろ決着は付くのだろうが、核兵器への対策、消費税率引き上げ開始の準備、災害からの復興と国政は待ったなしのはず、さっさと責任を取って、この騒ぎを終わらせて欲しいと思うのは庶民だからか。
しかし、責任を取る者が出て来ないのが不思議だ。誰がやったかは、本人がもっともよくわかっているはずだ。指示をしました、こうじゃないかと忖度しましたと手を挙げる者が出てくれば、そこで話は終わる。その人物の前途は閉ざされるだろうが、別段死刑になるわけではない。政治家として、官僚として死んでしまうと言われれば、そうかも知れないが、それがすべてではなかろう。やった人物、気を回した人物が、名乗り出ない間に、自殺者が出てしまった。実務を担当させられた人物が絶望のあまり生命を終わらせた。そのことに、関係者は恐怖すべきであり、手遅れにした責任を痛感しなければならない。
誰でも己は可愛い。生命として死にたくはないし、社会的に葬られたくもない。だが、その結果引き起こされたことへの責任は取らなければならなくなる。最初に責任を取っておけば、被らなくてすんだのだから。
偶然にも今、切腹という究極なる責任の取り方を描いた。諸氏のご高覧を願う。