絶対に避けるべき話題とは? 「痛い空気」を好転させ、リラックスした雰囲気を生み出す会話術

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話術

『1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話術』

著者
渡辺 龍太 [著]
出版社
ダイヤモンド社
ジャンル
社会科学/社会科学総記
ISBN
9784478103647
発売日
2018/05/25
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

絶対に避けるべき話題とは? 「痛い空気」を好転させ、リラックスした雰囲気を生み出す会話術

[レビュアー] 印南敦史(作家、書評家)

「おもしろい話ができない」「会話力がない」「言いたいことを伝えられない」などの悩みを抱えている人は少なくないでしょう。しかし『1秒で気のきいた一言が出る ハリウッド流すごい会話術――世界の一流が学ぶ77のルール』(渡辺龍太著、ダイヤモンド社)の著者は、それはセンスや才能の問題ではないと断言しています。

残念ながら日本では「会話」について学ぶ機会も、教育体制も整っていないからなのです。この本は、そんな悩みを科学的に、かつカンタンに解決できる欧米で生まれた「インプロ」というノウハウを、日本人向けにアレンジして、誰でもすぐに身につけられるように書きました。(「はじめに インプロ=即興力とは人生を豊かにする究極の能力」より)

たとえばアメリカの企業経営者や政治家、芸能人やスポーツ選手などが、プレゼンやインタビューなどでスマートに振舞っているのは、そうした立場の人々の多くがインプロのトレーニングを受けていて、即興で対応できる会話力を身につけているからなのだとか。

インプロとは英語の「即興(improvisation)」を略したもの。そんなところからも想像できるとおり、インプロの授業では「台本のない会話を、どう盛り上げるか」を芝居やゲームなどを通じて学ぶのだそうです。難しそうなことのようにも思えますが、センスや才能は不要。すでに海外では科学的に研究され、その技術を誰でも簡単に身につけられるように、ゲームを利用した習得術が用意されているというのです。

インプロに基づいた本書の第3章「一流が使う、あらゆる場面を『いい雰囲気』にできるすごい会話術」のなかから、「『痛い空気』を避け、あらゆるシーンが好転する」といういくつかの会話術を抜き出してみたいと思います。

言葉ではなく「心」を肯定的に変える

「自分が興味のあることには、他人もきっと興味があるはず」と思い込んでいるような、自己中心的な人がいます。たとえば、明らかに興味がなさそうな人に対して、自分のペットの画像を見せ続ける人など。あるいは子どもの学芸会や趣味の話、自分が興味を持っているアートやスポーツの話題など、こちらに興味のない話を延々と聞かされたりすることもあるわけです。

そういう面倒な人と接する際に有効なのが、「言葉ではなく『心』を肯定的に変える」という方法だと著者はいいます。個人差はあるものの、人は誰でも、心と言葉が一致していないことを見抜く能力を持っているもの。

そのため、たいていの大人は、話し相手の言葉と心が一致していない場合、「お世辞を言っている」「興味がないのだな」などと、自分が引き下がる場面なのだと認識することになります。

ところが上記のような「迷惑な人々」は、「心と体が一致しない人は、ウソをつく悪い人間だ」と認識してしまう傾向があり、不機嫌になってしまったりするのだとか。そこで面倒な相手と会話をする際には、必ず心と一致した言葉を使う必要があるというのです。

たとえば、動物に興味がない人がペットの写真を見せられたとしたら、自分の心を肯定的に動かして、ペットの写真を見ることが大切。なぜならそうすると、「名前はなに?」「いつから飼っているの?」というような、心から湧いてくる、ウソではない質問を思いつくことができるはずだから。

そして、それをなるべくテンションを上げて相手にぶつければよいという考え方です。もちろん、基本的には動物に興味がないのですから、動物好きの人と同じくらい濃いリアクションにはならないかもしれません。

しかし、ウソではない言葉を発すれば、どんなに厄介な人が相手だったとしても、不機嫌にさせてしまうような悪い自体は避けることができるだろうと著者は記しています。(129ページより)

木戸に立てかけせし衣食住を話しかける

会話をしていると、「自由になにか話さなくてはならない」という状況は頻繁に訪れます。仕事の場合はある程度テーマが決まってくるでしょうが、プライベートで初対面の人と話すときなどは、なかなか即興で言葉を出すことができないこともしばしば。

しかしそんなときは、自分で勝手に、話すトピックをランダムに決めて仕舞えばいいのだそうです。そして、その際に役立つのが、「木戸にたてかけせし衣食住を話しかける」という有名な方法。

この「木戸~」は、会話として盛り上がるトピックの頭文字。最初から順番に、

木(き):気候や季節、天気の話

戸(ど):道楽(趣味)の話

に:ニュースの話

立(た):旅の話

て:テレビの話

か:家族の話

け:健康の話

せ:性の話

し:仕事の話

衣(い):ファッションの話

食(しょく):食べものの話

住(じゅう):住まいの話

となっているわけです。つまり、このどれかのトピックを勝手に自分で選び、会話が成立するまで、その話題について相手に話しかければいいということ。そうやってこちらが勝手に話題を決めると、相手も楽に話すことができるようになるというわけです。(136ページより)

悪口・政治・宗教・野球を避ける

大人は子どもと違い、相手から気にくわないことをされたからといって、めったやたらとカンシャクを起こしたりはしないもの。しかしその代わり、不快なことをする人を「要注意人物」と認識し、距離を置くようになりがちです。

そのような事態を避けるため、ビジネスマンは会話をするうえで、「悪口・政治・宗教・野球」の話題を避けることが重要。なぜなら、これらの話題には、踏むと一発で「心のブラックリスト」に入れられてしまう地雷が大量に埋まっている可能性があるから。

これらの地雷の爆発力は、ピンからキリまで多種多様。いちばん弱いものは「どこか仲よくなれない」という関係になるという程度でしょうが、大爆発したときは悲惨。たとえば酒の席などで相手が熱狂的な阪神ファンであることを知らずに、阪神を露骨にけなして巨人を応援したなら、相手によっては殴り合いにまで発展するリスクも否定しきれないということです。

とはいえ自分がこうした話題を避けたとしても、相手が振ってくることもあるでしょう。たとえば「最近、自民党の支持率、すごく下がっているらしいね」というように政治に踏み込んだ時事問題を持ち出されることも十分に考えられるわけです。そんなとき、露骨に嫌な顔をしたとしたら、それはそれで相手の地雷を踏みかねません。

だからこそ、そういった場合には、「そうらしいですね。今朝の新聞に出てましたね」と事実のみに言及し、自分の意見を言うのは避けておくべきだということ。

でも慣れてきたら、相手の地雷源に入って探りを入れてみるという手も。たとえば、「下がったって、どれくらいでしたっけ?」などと聞いてみるわけです。すると、「ようやく不支持と支持が逆転だって。いままでの支持率がおかしかったんだよ」というように、アンチ自民党の人であるという情報が得られるかもしれないということ。

あるいは逆に、「でも、そんな支持率はあてにならないよ。ネットの支持率も下がってないし、国民は結局、自民党を選ぶと思うよ」と、自民党の支持者だと明かしてくれることも考えられます。

つまりはそういう情報をうまく利用しながら、自分は「勉強不足でよくわからない」というポジションを保ちつつ、地雷を避けて会話を進めていけばよいということです。

「タブーの問題」は、使いこなすと結束力が深まる人間関係を築くこともできるもの。たとえば同じ野球チームのファンだったりすると、それだけで仲間になれたりするわけです。

ただし非常に高度なテクニックを要することでもあるので、確信が持てないのであれば、やはりやめておくのが正解。特にビジネスパーソン同士のつきあいにおいては、心が通じ合う深い関係になる必要がない人が大半であるはず。なのにあえて危険なリスクを冒し、これらの話題に触れる必要はないということです。(140ページより)

著者によれば、人間の悩みのほとんどはコミュニケーションとお金の問題。しかしインプロを学べば、コミュニケーションの悩みが大幅に減り、仕事もうまくいく可能性が高くなるのだそうです。コミュニケーションが苦手だと感じている人は、参考にしてみてはいかがでしょうか。

Photo: 印南敦史

メディアジーン lifehacker
2018年7月5日 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

メディアジーン

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク