24年で23冊のミリオンセラー 名物編集者の“圧倒的”読書論

レビュー

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク

読書という荒野

『読書という荒野』

著者
見城 徹 [著]
出版社
幻冬舎
ジャンル
文学/日本文学、評論、随筆、その他
ISBN
9784344033054
発売日
2018/06/06
価格
1,540円(税込)

書籍情報:JPO出版情報登録センター
※書籍情報の無断転載を禁じます

24年で23冊のミリオンセラー 名物編集者の“圧倒的”読書論

[レビュアー] 田中大輔(某社書店営業)

『編集者という病い』(集英社文庫)や、『たった一人の熱狂』(幻冬舎文庫)など、熱い想いを綴った本を数多く執筆している幻冬舎社長の見城徹。「顰蹙は金を出してでも買え」というような反骨精神あふれる過激な言葉が魅力である。そんな見城徹の新刊『読書という荒野』が発売1カ月で10万部を突破するヒットとなっている。

 本著は見城徹の人生と、人生を切り開いてきた本を紹介し、文芸編集者時代に出会った数々の才能ある人々について、彼らの代表作とともに紹介したものだ。彼が作家を口説く際に行ったという行動の数々がどれも想像の域を超えていて、驚くのは必至だ。例えば大物作家の五木寛之とどうしても仕事がしたいと思っていた彼は、作品が発表された際、すぐにそれを読み、五木寛之の「五」にちなんで、五日以内に感想を手紙で送っていたそうだ。長編・短編小説だけではなく、雑誌に載ったエッセイや対談すべてに対して行っていたというのだから凄まじい。24年間で23冊ものミリオンセラーを生んだ化け物編集者の圧倒的な努力をそこに垣間見た気がする。

 さらにこの本で魅力的なのは刺激的な言葉の数々である。吉本隆明の『マチウ書試論』(講談社文芸文庫)や、ホセ・トレスの『カシアス・クレイ』(朝日新聞社)など、彼が影響を受けたという様々な本から学んだことを厳選した言葉で紹介している。また編集者の武器は「言葉」だけだ。という、言葉の重みを理解している著者の言葉だからこそ、過激な発言もまっすぐ心に響くのだろう。最後にこの本の中で一番印象に残った文章を少し長いけれど引用して終わろう。

「正確な言葉がなければ、深い思考はできない。深い思考がなければ、人生は動かない。自己検証する。自己否定する。それを、繰り返し、繰り返し、自己嫌悪との葛藤の末に自分の言葉を獲得する。その言葉で、思考して、思考して、思考し切る。その格闘の末に、最後の最後、自己肯定して救いのない世界から立ち上がる。認識者から実践者になる。暗闇の中でジャンプする。人生を切り開く。読書はそのための最も有効な武器だ」

新潮社 週刊新潮
2018年7月26日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

  • シェア
  • ポスト
  • ブックマーク