今はなき「本牧亭」の名人、変人、奇人伝も。“講談”の魅力

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神田松之丞 講談入門

『神田松之丞 講談入門』

著者
神田 松之丞 [著]
出版社
河出書房新社
ジャンル
芸術・生活/諸芸・娯楽
ISBN
9784309279589
発売日
2018/08/01
価格
1,890円(税込)

書籍情報:版元ドットコム

今はなき「本牧亭」の名人、変人、奇人伝も。“講談”の魅力

[レビュアー] 立川談四楼(落語家)

 落語にハマっていた青年が講談に魅入られ、神田松鯉(かんだしょうり)の弟子になり、松之丞(まつのじょう)の芸名をもらった。松之丞は講談を「宝の山」だと思い精進した。修業10年の甲斐あって今、松之丞は講談界に久々に現れたスタアとして注目されている。

 松之丞はハタと気づいた。業界の勢いは上向いているものの、インフラが整わず入門書すらほとんどないことに。そこへ本書の企画が持ち上がった。聞き手に長井好弘氏、写真を橘蓮二氏という布陣で。ついに入門書と言うには濃い一冊が出来上がったわけである。

 1 松之丞に聞く、講談の基本。2 松之丞全持ちネタ解説。3 松之丞、人間国宝・一龍斎貞水に講談の歴史を学ぶ。4 松之丞が語る、過去・現在・未来。そんな4章立てだが、私は3から入り、1、2、4と進んだ。3は、我が師談志と同世代の貞水先生が語る昭和の講談界だからだ。高校生の頃に通った本牧(ほんもく)亭が出てくる。改修され、その高座を落語家として踏んだが、本牧亭は今はない。名人、変人、奇人列伝が面白い。懐かしい名も出てくるが、私が間に合ってない人も数多く出てくる。

 いくらか古くなった私はそんな読み方をしたわけだが、近年松之丞を知った方には、1から順番に読んでくださいとお勧めする。

 4で、松之丞が40年後に照準を合わせていることに驚く。その時代のニーズに合うホームグラウンドを持つべきだとし、自分達で経営する寄席を作るというのだ。せいぜい明日のことしか考えない芸人が多い中、何という先見性であろうか。

 松之丞からすれば自然な発想なのかもしれない。何しろ真打昇進の披露興行を歌舞伎座でやると明言している男なのだから。私は人気と芸がともに充実している今こそ真打に抜擢すべきと思う派なのだが、彼の所属する組織は年功序列を旨とし、数年かかる見込みなのだ。どうだろう、思い切って決断してみては。

新潮社 週刊新潮
2018年10月4日号 掲載
※この記事の内容は掲載当時のものです

新潮社

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